松本崇 162センチ体格差はねのけ東日本∨

拳法
2018.07.11

◆6・3 東日本学生個人選手権(中大多摩キャンパス第一体育館)

▼段の部

 松本崇――1位


 多くの壁を乗り越え、栄冠を手にした。個人戦で王者を決める東日本学生個人選手権。松本崇雅主将(文4=初芝立命館)が段の部決勝で田畑正貴(法2=東京都立府中東)との同門対決を制し、優勝を飾った。ルーキーの深町雅也(法1=朝倉)も3位入賞。明大勢で表彰台を独占するのは実に18年ぶりの快挙となった。しかし、優勝までの道のりは決して平たんではなかった。

小さくても勝てます
 162㌢、64㌔。主に体重無差別で行われる拳法界でその姿はひときわ小さく見える。だがマットの上では強い。そして〝速い〟。「小さいやつが大きいやつを倒した方がかっこいい」。反骨心を原動力に拳を、足を振り続けた。原点は小学生時代に通い始めた空手道場だ。「自分の基礎をつくった」と今のスピードで勝負するスタイルを確立。勝つために足を動かして相手の懐に入る。〝巨人狩り〟の極意を学んだ。
 象徴的だったのは今大会4回戦。中大の伊藤弘海は、183㌢、107㌔。体格差を生かし、組みに入ろうとする相手を軽い足運びでかわす。そしてできた一瞬のスキに左足を一閃(いっせん)。そのまま1―0で逃げ切った。「大きい選手は得意」。その言葉には確かな自信が宿っていた。

不遇の時期を越えて
 心技体がそろうまでには時間を要した。特に苦しんだのは〝心〟の部分。「練習中はすごく強い。でも試合になると……」(林力希・法4=明大中野)。大会で勝てず、気持ちは乗らない。3年間、足踏みは続いた。同時に同期の一般生が台頭していく。「何で俺がスポーツ推薦で選ばれたんやろう」。心の中でつぶやいた。昨年度は最も大事な府立(団体インカレ)決勝で出場メンバーから落選。史上初の6連覇を決めても、心の底から喜べなかった。しかし最上級生となり、変わった。「泣いても笑っても全部最後。楽しく全力でやろう」。たどり着いた答えは試合を楽しむこと。何か特別なきっかけはない。それでも苦難の3年間が徐々に実を結び始めた。その気持ちを支えたのは自他共に日本一と認める練習量と質。「今は誰よりも全力でやっている自信がある」。生まれた心の余裕。感じていた重圧も昔の自分と一緒にどこかへ消えた。
 座右の銘はない。目標とする人もいない。そんな主将が目指すのは、前人未到の府立7連覇。誰も歩いたことのない道を進み続ける。軽やかに、そして楽しげに。【楠大輝】

◆松本崇雅(まつもと・たかまさ)大阪府出身。格闘技を始めた理由は「地元に道場があったから行っただけ」。162㌢・64㌔