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池田純氏インタビュー 他人事じゃない日大アメフト問題

明大スポーツ新聞 2018.06.13

――今回の事件の本質的な問題は何か。

  一番の本質的な問題は、大学スポーツ界の構造だと思います。仮にアメリカで同じ問題が起こっていたら、『試合が終わった次のウイークデーには、処分が発表されている』とスタンフォード大の知人から聞きました。アメリカはNCAA(全米大学体育協会)が権威ある上位組織として機能していて、その統括に各大学のスポーツを統括するAD(アスレチックデパートメント)があり、さらにその統括と連携に各部の監督やコーチが存在する。このような構造なのでアメリカの各大学ではADに権威があります。ですが、日本は真逆の構造。各部の監督やコーチ、OBの下、自主的運営がなされているのが多くの実態。そのため、大学側は各部を統括し、危機管理を一元化できていない。今回の件は、構造が現代の社会環境の変化についてきておらず、内向きで、学生を第一主義とし、社会からの評価を念頭に置いた構造に進化できていない、大学スポーツの悪いところが全部出てしまったと思います。


――日大で起こったようなことは、今の明大でも起こる可能性はあるか。

  十分あるのではないでしょうか。ですので、学長特任補佐としても先ずは実態を調査すべきと考え、先日明大にそういった提言もしています。

 ですが、明大がどう動くのか、その実態までは私は関与できません。私は〝外部の知見のある人間〟としてアドバイスをしますが、決定権は大学内部にあります。危機管理は可能性のあるリスクを未然に対処することから始まります。迅速に動くことが大切です。このことは日大を見ていても皆さんも明らかだと感じるはずです。

  

――これから明大はどうすべきか。

  まずはしっかりとした組織をつくるべきです。大学スポ―ツの発展や学生アスリートのことを最優先に考えて意思決定し、権威があり明大のスポーツを統括可能な組織。リーダーも人事権も予算権限も大切でしょう。忖度(そんたく)が行われない組織がつくられることが日本では一番難しい。そして、今回の日大の件を明大の現状と比較して、課題を抽出することも大切。そうすれば、明大ブランドや明大の学生の信頼のため、構造的に進化しなくてはならないところは見えてくると思います。

 

――今回の件で、良くも悪くも大学スポーツに注目が集まっていると思うが、現状をどう捉えているか。

  大学スポーツが本質的に変わらなくてはならない瀬戸際だと思います。ですが、残念ながら「本当に変わらないといけない」という危機感にさいなまれている人は少ないのが実情でしょう。多くの人間は事なかれ主義に傾きがちなもの。「自分の大学には、すぐには、同じ問題は起こらないだろう」と思っているのではないでしょうか。それではこのまま世論が過ぎ去ればだんだんと風化してしまう。ですが、この問題はどこでも起こり得ます。同じ事態が起きないように、本来はここで大きな進化をなしとげるべきタイミングなのです。

 対岸の火事にしないことが大切です。学生を大切に。大学のブランドと大学スポーツを大切に。構造の進化を成し遂げてもらいたい。

  【聞き手・古賀章太郎】


池田純(いけだ・じゅん)住友商事、博報堂を経て横浜DeNAベイスターズ初代球団社長に就任。年24億あった赤字を5年間で黒字化させたことは有名。現在は明大で学長の特任補佐やスポーツ庁参与を務めている


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