3人が表彰台に上るも実力一歩及ばず 団体総合4位/全日本大学対抗選手権

ウエイトリフティング
2016.12.26
 インカレは各階級のスナッチ順位、ジャーク順位、総合順位それぞれ1位から8位までの選手に得点が与えられ(1位8点、2位7点……8位1点)、各校代表8人の獲得点数の合計を競う。
 11年ぶりの表彰台を目指したインカレは団体4位で幕を閉じた。個人としては56kg級の佐藤彰紀(営4=常翔学園)がチーム最高の2位入賞。また62kg級の永原祐志(法4=熊本西)、94kg級の松本康貴(政経3=常翔学園)が3位と昨年より2人多い3人が表彰台に上ったが、記録なしの選手が2人いたことなどが影響して得点を伸ばしきれなかった。

◆12・23~25第62回全日本大学対抗選手権(さいたま市記念総合体育館)
▼56kg級
 2位 佐藤彰
 4位 後藤
▼62kg級
 3位 永原
 中野 記録なし
▼94kg級
 3位 松本
▼105kg級
 6位 山本
 針生 記録なし
▼+105kg級
 4位 上野
▼総合
 4位 明大

[56㎏級]
 初めての大舞台でも真価を発揮して見せた。佐藤彰紀(営4=常翔学園)がスナッチ104㎏、ジャーク126㎏のトータル230㎏で2位。スナッチで1位と自らの得意分野で見事に結果を残して見せた。昨年もメンバーに選ばれながらもケガで出場できず、全日本インカレは今大会が最初で最後の出場。「一本目はすごく緊張した」と言うがきっちりと決め、流れをつくった。「スナッチで1位、ジャークで踏みとどまってトータルでも1位を狙っていた」。惜しくも4㎏差でトータル1位はならなかったが、優勝するためジャーク3本目では練習でも一度しか取ったことのなかった130㎏に挑戦。6本取りも狙ったが「力不足で悔しい」とこれを落とし1位の可能性はついえた。それでも最後の大舞台でスナッチ、ジャークともに試合ベストを更新。東日本インカレ後から一気に記録を伸ばした要因は、自分の身体に必要なものを見極めたことにある。軽量級でこれ以上体重を増やしてパワーをつけることができないため、サプリメントをうまく取り入れ筋力増強に成功。成果は数字として表れ、最後の試合まで記録を伸ばした。「明治でよかった」と感謝を示し、7年間の競技生活に終止符を打った。

 56kg級に出場した後藤将(政経3=県立川口)はスナッチ9kg、ジャーク13kg、トータル227kgで5位につけた。自身3度目のインカレ出場となる今大会は「『悔しい』の一言。勝負に出た3本目を落とした」。スナッチ、ジャークともに3本目で失敗し、順位につなげることができなかった。要因に挙げたのは大会に向けた調整ミスと、メンタル面の弱さ。肘の痛みを引きずり、さらに5㌔の減量により体の節々のコンディションが悪かった。インカレ独特の緊張感も手伝って持ち前の勝負強さは影を潜めた。
 来年に向けて鍛え直す。同じ階級に出場した佐藤彰はスナッチで1位。「フォームとか盗むものがたくさんある。これからもコミュニケーションを取って教えてもらいます」。身近な先輩が何よりのお手本だ。苦手とするスナッチを克服し、軽量級のエースにのし上がる。

[62kg級]
 想定外の表彰台だった。永原祐志(法4=熊本西)はスナッチ112㎏、ジャーク137㎏でトータル249㎏を挙げ3位入賞。ここまで調子が悪く不安要素が多かったという中での試技となったが、決めるところでしっかりと決め切り表彰台に上った。スナッチ1本目では「足がすくんだので整えていた」とプラットに入ってから挙げるまでに時間をかけたが一気に引き上げられず失敗。ジャーク3本目は全日本選手権で成功させている140㎏に挑戦したが個人戦とは違うプレッシャーがあった。「体がずれた」と刺しでよろめき、耐えきることができずに落とした。「最近4本成功が多い」と最初と最後でつまずき成功率に納得はいっていないが「思っていたより取れた」と18点を獲得し、任された以上の仕事をしてみせた。今後も社会人として競技を続けていく予定。「4年生になってようやく芽が出た。もっと早くから頑張っていれば」と悔やむ部分もあるが、今年は全日本選手権4位、日中韓フレンドシップ大会出場と飛躍を見せた。ケガもありながらやり切った4年間だった。

 まさかの結果にプラットホームで立ち尽くした。昨年に引き続き、2年連続でインカレ62kg級に出場した中野景介(営3=須磨友が丘)はスナッチ順位2位となる113kgを挙げた。しかし減量に直前まで苦しみ、うまく調整ができなかった影響でジャークの135kgは3本失敗。合計獲得点数は7点に終わり「本当に4年生やみんなに申し訳ない」。軽量級は明大の大きな得点源として期待されていただけに、悔しさと後悔だけが募った。
 それでも落ち込んでいる暇はない。調整の不具合やスタートの重量設定の甘さなど、反省点は明確だ。「次に生かして結果で示すしかない」。4年生としてチームの中心となる来シーズンに向けて改めて練習から見直していく。今回の悔しさをばねに、再スタートを切ってみせる。

[94kg級] 
 94kg級に出場した松本康貴(政経3=常翔学園)はスナッチ143kg、ジャーク182kg、トータル325kgで3位入賞を果たした。「少しは満足できる結果だった」。4位を最低条件として臨んだが、予想以上の結果がついてきた。今大会、ジャークのフォームを変更。バーベルをキャッチする際、足を前後に開脚するのが一般的だが、松本は両足を平行にしてキャッチする「スプリットジャーク」に挑戦。「最近パワーがついてきたのにジャークができなかった。嫌になっていたとき前のフォームを思い出した」。体の柔らかい松本が今年10月から取り入れた秘策だった。ジャーク2本目で175kgを失敗するも、3本目で自己ベストを1kg更新する182kgを成功させた。94kg級で上位に位置する選手は4年生がほとんど。来年は松本に各種目での1位が期待される。「手堅く24点取ることが絶対」。階級敵なしの王者を目指す。

[105kg級]
 大学競技生活の集大成に臨んだ。105kg級に出場した山本琢人(政経4=熊本西)はスナッチ125kg、ジャーク171kg、トータル296kgを挙げて6位となった。「スナッチ3本目、ジャーク3本目でこの4年間が決まると思っていた」と決意をもって臨んだ今試合。インカレ独特の雰囲気の中でスナッチは1本目のみの成功に終わったが、ジャーク3本目ではよろめきながらも耐え抜き、171kgに成功。「3本目は絶対挙げたかった」と最後の1本で意地を見せた山本に応援席も沸いた。記録、成功率ともに目標達成とはいかなかったが、その表情にはすがすがしさも感じられた。そして「この結果を踏み台にしてくれればうれしい」と、後輩たちのこれからの活躍に期待を寄せ、4年間の大学競技生活に終止符を打った。

 痛みを抱えながらの試技となった。初めてのインカレ出場となった針生丈志主将(政経4=東京学園)はスナッチ0㎏、ジャーク161㎏で記録なしに終わった。大会2週間前に股関節をケガすると、焦りから練習を行いさらに悪化。「痛み止めを飲んで気合で取ろうと思ったが、気合が足りなかった」。自己ベストが136㎏のスナッチで126㎏を一本も成功させることができず。3本目でプレスアウトの判定を受けるとプラットを殴り、悔しさをあらわにした。ジャークでは8位につけ1点は獲得したが「取って当たり前」という161㎏の記録も満足いくものではない。「ケガしていなければ」という思いはあるが、同時に「出し切った。悔いはない」とすがすがしい表情も浮かべた針生。主将としてチームも見ながら、全日本学生個人選手権に4年生で初出場、団体メンバー選出と爆発的成長で躍進を見せた1年間。「やれることはやった結果。後輩たちにも後悔はしないでほしい」。団体表彰台という目標を後輩に託し、最後の仕事を終えた。

[+105kg級]
 最大のライバルの壁を越えられなかった。+105kg級に出場した上野祐脩(政経3=東京学園)はスナッチ140kg、ジャーク185kg、トータル325kgで4位。上野がライバルとする比嘉(法大)は3位につけた。「今回の大会のモチベーションは比嘉さんを倒すことだった。比嘉さんはもう卒業するから本当に悔しい」。スナッチの記録は互いに140kg。しかし、ジャークで差をつけられた。3本目で、比嘉が成功した191kgに挑戦するも失敗。あと一歩のところで表彰台を逃した。「最低限の仕事しかできなかった」と上野。昨年はスナッチ2本目でケガに見舞われ、ジャークを棄権。今年は6本中4本を成功させ一人で計15点を稼いだが、自己評価は厳しかった。「安定した試技で安定した得点を取らないといけない。とりあえず今は頑張るだけ」。強者がそろう+105kg級で、来年こそ表彰台に上がってみせる。

 目標としていた表彰台には届かなかったが、昨年のインカレ8位から躍進を見せた今大会。「4年生の頑張りで来年につながる大会に終われた」と本多監督もチームを引っ張った4年生を称えた。4年生はこれで引退を迎えるが、これまで築かれたものは次の世代に引き継がれる。そして、苦楽を共にしてきた後輩たちだからこそ「来年、それ以降にこれがつながればいい」(針生)とこれからに期待をかける。進化を遂げるため、新たな戦いはもう始まっている。

[谷澤優佳・星川裕也・高野夕]