福岡に再度敗れ、悔しい3位/グランドスラム東京

柔道
 11月の講道館杯で福岡(綜合警備保障)に不覚を取られ敗北した海老沼。早くもグランドスラムという大舞台でリベンジを果たす機会が訪れた。しかし結果は前回と全く同じものに。同じ相手に、同じ準決勝で、同じ技を決められての敗北となった。優勝を逃す以上に悔しい結果となった。
 
 講道館杯で負ったケガを抱えながら出場した今大会。だが海老沼は序盤、そのケガなど感じさせない戦いぶりを見せた。初戦の崔輝良(香港)戦では相手をわずか10秒で畳に沈める。一本の瞬間には観客も思わず声を上げ、最高の滑り出しとなった。

 2回戦の相手は2カ月前の世界選手権で、得意技の肩車を決められたクーニャ(ブラジル)。篠原男子代表監督がコーチに付き、薗田助監督が見守る中、試合が始まる。前回は一瞬のスキを突かれたので一瞬も気が抜けない。試合が動くのは残り時間が約1分になった時だ。海老沼の腰車がさく裂し技ありが決まる。このまま試合終了に持ち込みたいが、相手も簡単に譲らない。残り20秒の浮技で技あり。勝負はゴールデンスコアに持ち込まれる。延長になっても動揺することなく勝負を進め、残り1分40秒に海老沼は横四方に持ち込む。押さえ込みの最中に会場は歓声が響き、会場全体が海老沼を応援した。海老沼は相手の抵抗に耐え抜き一本。さらに駒を進めた。
 
次の相手のアワド(エジプト)も釣り腰の1分半で決着し、準決勝進出を決めた。次の相手は因縁の福岡。ここで勝てば、優勝に大きく近づく。「2回目は勝ちたかった」と海老沼も意気込んだ試合だ。だがそのリベンジもあっけなく終わった。試合開始から約1分、巴投げからの腕腕挫十字固め、前回と同じパターンに完全にはまった。海老沼はたまらずに「参った」。同じ轍(てつ)を踏んでし舞う結果に。そして福岡はそのまま決勝に進出し、見事優勝。両者の明暗を分ける試合となった。

 今回は世界選手権王者の森下(筑波大)も敗退し、福岡の存在が顕在化した形だ。篠原男子代表監督の「福岡、森下、海老沼を中心に強化していく」という発言からも読み取れる。園田助監督は「まだ甘い。簡単に技を受けてしまう。海老沼の行動も福岡に読まれている。がむしゃらな高校生の柔道」と課題を挙げ、「また鍛え直さなくてはいかん」と続けた。
 海老沼は1年を振り返り、「今年は勝ち続けることができなかった」と不安定さを課題に挙げる。ここに来て、森下以外のライバル出現、やはり柔道の本家・日本の層は厚い。
 己への課題と、ライバルの出現、海老沼に立ちはだかる壁は高く、険しい――。



~園田助監督のコメント~
「まだ甘さが目立つ。簡単に技を受けている。福岡に2度負けたということは相手の実力が上だということ。単調な攻撃しかしないから、相手に読まれて返されている。声を出して指摘すれば、攻撃のパターンを変えるなど工夫するが、まだできていない。テクを持っているのに生かす術を持っていない。これは若い選手によくあること。攻め続けるのも華があるが、時には引くことも覚えないと。これではがむしゃらなだけの高校生の柔道だ。
 海老沼は今、色んな経験をして成長しなくてはならない。私も女子代表の監督をしているので分かるが、不安定な選手は起用できない。ましてやメダルが期待され、多大なプレッシャーが掛かる五輪ならなおさらだ。海老沼を鍛え直さないといけない」。



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