(4)もう一人の形の妖精・足利友里江

空手
1999.01.01
 入学して以来、形種目で活躍する大澤美諭季氏(平18法卒)や松谷(法3)らの陰に隠れていた足利。最後の個人戦となった6月の全日本学生選手権でも予選通過はならなかったが、彼女に悔いはなかった。それは、自分の信念を貫いた過程があったからだ。

環境の変化

 全体練習ではほとんど組手だけを行う本学。形にも出場する選手は道場に通って練習するしかない。足利は形専門だが、入学当初は「部に溶け込むため」に部の練習を優先した。組手の選手たちへの遠慮もあった。2年になると「形の動きが(体から)抜けていく感じ」を覚え、危機感から週1回道場に通い始める。しかしほぼ毎日練習した高校時代と比べて、練習量の激減は明らかだった。

「これではいい形が打てるわけがない」。あきらめの気持ちが、彼女の形にも出ていた。

 そんな足利に転機が訪れたのは3年時。松谷とともに大澤氏の元で練習を始めた。そこで意識の高い選手と練習するうちに、足利の意識は変わっていった。

意識の変化

 今まで取り組む意味を見いだせなかった部の練習も、そこから得られるものを探すなど、割り切って考えられるようになった。「練習は量だけじゃなくて、その中で自分の意識をいかに集中するか」。2時間の練習を充実させられるようになった。

また以前は結果にこだわっていたが、練習量の少なさに「自分は(負けても)悔しがっちゃいけない」。そう思うと次第に「満足できる形を打つ」ことを第一に考えるようになり、それが二度のインカレ出場につながった。

そして迎えた最後の個人演武。張り詰めた空気の中、足利らしい優雅な、そして最高の形が決まった。「これで負けたら仕方ないと思える形ができた」。予選敗退ではあったが、足利にとって満足できる結果となった。

インカレでも3人で息の合った演武を披露する(左から、足利、松谷、久保田)
インカレでも3人で息の合った演武を披露する
 (左から、足利、松谷、久保田)

最後の思い出に

 形もできる久保田(商1)が入部したことで、今年は松谷を含めた3人で団体形が組めるようになった。10月の関東大学選手権には「楽しめればいい」と臨んだが、見事3位入賞。インカレ出場が決まり、約1カ月半長く部で形が楽しめることになった。足利にとって、これが本当に最後の舞台となる。「独りだったら、もういいやとなっていたかもしれない。後輩の存在は大きかった」。4年間の集大成に、大切な仲間との演武で花を添える。

◆足利友里江 あしかがゆりえ 商4 恵庭南高出 157cm

☆次回予告☆
第5回は、11月21日、実力と人望を兼ね備えた主将、稲浩平(法4)選手です。