(7)悔し涙から5ヶ月 カメラ越しに感じた成長と魂の柔道

柔道
 11月1、2日に兵庫県の尼崎市で行われた第10回記念全日本学生体重別団体優勝大会で明大が8年ぶり2度目の優勝を飾った。決勝の相手は、これまで王者奪還の壁として明大の前に立ちふさがってきた3連覇を狙う国士大。因縁の相手に6-1で大勝して優勝を手にした時、田中貴大主将(政経4)をはじめ、選手たちは目に涙を浮かべていた。

 この光景をみながら、私は今年6月の全日本学生柔道優勝大会で見た別の涙を思い出した。決勝で東海大と対戦し、3-4で惜敗。試合後のミーティングで学生、コーチ陣らがともに大量の悔し涙を流していた。その時、取材した私に田中主将は「悔しい……。応援してくれてありがとう」と声を出すのも辛い状況で言ってくれた。柔道部以外にも多くの取材をしてきたが、ここまでの涙を見たことはなかった。

 その大会後の練習は素人の私がいうのもおこがましいが、目を見張るものがあった。団体戦が終わり、気が抜けがちな時期だったが、道場は常に熱気に包まれていた。夏の合宿では通常の2倍近くもの練習を重ねたという。厳しいけいこを続ける部員たちは、充実した様子に見えた。やらされる練習ではなく、自らがやる練習。どうしても勝ちたいという気持ちが感じ取れた。「俺たちは崖っぷち。だから、もうやるしかない」(田中主将)。その姿を見て、私自身も思わず一緒に声を出したこともある。

 そんな厳しい練習を経て、尼崎市で戦う選手たちからは明大伝統の「魂の柔道」というフレーズが自然に浮かんできた。藤原監督が就任以来、何度も口にしていた言葉だ。常に勝つことへの執念を持ち、稽古に臨むことによって積み重ねられていき、逆境でこそ発揮される力だ。私はこの大会までその意味を本当には理解しきれていなかった。しかし、3-3で迎えた準決勝の大将戦で赤迫佑介(法4)が内またすかしで一本勝ちをした瞬間や、決勝で攻め続けて優勢勝ちをした田中主将らを試合場の間近でカメラを構えながら見たとき、「魂」の存在を初めて実感した。

 その日、多くの部員たちが「魂の柔道」の一員になった。私が入部当初に見ていた頃のような弱音を吐いたり、全体を考えてない部員はいない。選手たちは精神面も見違えるほど強くなり、戦う集団として8年ぶりの栄冠をつかんだ。4年生にとってはこの団体戦が最後の学生大会だった。有終の美を飾った「魂の柔道」。それを、来年以降の明大を支える後輩に引継ぎ、栄光の歴史を刻み続けてほしい。

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http://www.meiji-judo.com/index.htm


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