(1)仲間を信じて…真のエースに/水野裕哉

卓球
 今回の優勝で秋季リーグ戦4連覇を果たした明治。何とその4度すべてにおいて主勲章(MVP)を受賞している選手がいる。1年次から常にチームの中心となって戦ってきた水野だ。この秋季リーグ戦では、エースとして見事明治を優勝へと導いた。大学最後の団体戦で有終の美を飾った水野。しかしここに至るまでには、「エース」としてのさまざまな苦悩があった。

 エースとしての思い。始まりは昨年12月に行われたチームカップ。「お前はチームの柱でいろ」(高山監督)。 優勝しながらも気の抜けたプレーを見せた水野に対し監督はそうゲキを飛ばした。それを受け水野にも「最高学年となる今年、(水谷)隼(政経1)がいても自分がエースでやりたい」と、エースとしての強い思いが生まれた。

 襲いかかる重圧。しかしチームのスタートとなる春季リーグ戦で、優勝候補筆頭と言われていた明治はまさかの2位。「負けたのは自分のせい…」。水野のこのリーグ戦での成績は、4勝3敗。事実上の優勝決定戦となった早大戦でも、主将・塩野とのエース対決で惜敗と、思うような結果を出せなかった。そんな水野から出たのは「エースは勝たないといけない。今回自分が負けてもチームは勝ってきてたけど、(優勝できなかったのは)エースとして勝てなかった自分の責任」と自身を責める言葉だった。「勝たなきゃ駄目と思うあまり受け身になってしまった」。優勝候補筆頭といわれた今年の春、「エース」としての責任は今までにないほど大きく、そしてそれは重圧となり水野に襲い掛かっていた。プレッシャーに負けた春だった。

 気がついた仲間の存在。そんな悔しい春を経験し迎えた秋季リーグ戦。大学最後の団体戦となるこの舞台で「エースとしてやりたい」という水野の強い気持ちに変わりはなかった。しかし今年、団体戦ではいまだ無冠に終わっている明治。状況だけを考えれば今回懸かるプレッシャーは春以上のものに違いなかった。そして全勝で迎えた最終日、優勝を懸けた相手はくしくも春、明治に唯一の黒星を付けた早大だった。
 3対1で回ってきた5番勝負。水野の相手は関東学生選手権で決勝フルセットデュースの接戦を共に演じた足立だ。水野が決めればチームは優勝……プレッシャーのかかるこの場面。しかし水野の中で、春とは大きく変わったことがあった。「決めてやるって気持ちはあったけど、後ろにタツ(小野主将)、甲斐(営1)がいたから気分は楽だった」。

 自分が勝たなきゃチームは負ける――ずっとそう思って戦ってきた。だがそうではなかった。「自分が負けても後ろがいる」。勝たなくてはいけないと思うあまり受け身になって本来の力を発揮できない、そんな春の時の水野はもうそこにはいなかった。仲間の存在がプレッシャーに打ち勝つ原動力となり、水野は本来のプレーを取り戻したのだ。

 そして、2セットを奪って迎えた3セット目、11対10からこん身のドライブが決まったその瞬間、水野はラケットを仲間のいるベンチに向けて投げ上げた。「最後のリーグ戦、隼が入ってチーム全員がそろって、そして優勝できてうれしい」。殊勲賞(MVP)受賞に対しても「これは僕だけの力じゃない。みんなに感謝したいです」。仲間を信頼し、そして仲間の思いを背に受け戦った水野。チームを優勝に導いたその堂々とし気迫あふれる姿はまさに「真のエース」に違いなかった。

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