
悲願の38秒台達成ならず/日本選手権・リレー競技
日本学生対校選手権(以下、日本インカレ)では明大記録を2度も更新するなど、今波に乗っている男子4×100メートルR(以下、4継)。夢の38秒台への壁を打ち破るのは、もう間もなくかのように思われた。予選ではバトンパスに乱れが生じたものの、1着でゴールインし順当に決勝へ進出。さらなる好記録を目指して決勝に挑んだが、レース終了後に失格が判明。悲願達成へのバトンは来年度に託された。
◆10・7~8 第107回日本選手権・リレー競技(国立競技場)
[1日目]
▼男子4×100メートルR予選
2組 松下、木村颯、川津、木村稜 1着 39秒50 決勝進出
[2日目]
▼男子4× 100メートルR決勝
松下、木村颯、川津、木村稜 DQ
心地よい秋晴れの中で日本選手権・リレー競技(以下、日本選手権リレー)が幕を開けた。日本インカレといった各種大会を勝ち進んできた猛者たちが国立競技場に集結。先日、大学記録を樹立した明大も「4継はまだタイムを伸ばせると思うので、日本選手権リレーで38秒台を出すためにまた練習しようと思う」(川津靖生・法1=明星学園)と闘志を燃やしていた。そこから約1カ月。今度こそ38秒台に到達し優勝という栄光をつかむべく、日々精進してきた。
明大史上最も速いチームで挑む日本選手権リレー。1日目の予選では1走と2走の間でバトンがうまく渡らず、タイムロスに。「風向きが変わったことで合わせた歩数と少しずれたことがミスの要因だと思う」(木村颯太・法4=明星学園)。しかし3走の川津が巻き返しを図り、4走の木村稜主将(政経4=乙訓)へ望みをつなぐ。最後の直線を先頭で飛び出すと、順大の猛追もかわし1着でゴールに駆け込んだ。とはいえ39秒50というタイムには満足していない。「バトンパスを改善すれば、38秒台はまだまだ狙える」(木村颯)。決勝でのリベンジを誓い、1日目は終了した。
一夜明け、肌寒さを感じさせる天候の中で始まった2日目。予選2番手のタイムで通過を決めた明大は5レーンという好位置からスタートした。1走には今シーズン上り調子の松下かなう(法3=大分東明)を配置。予選で課題に挙げていたバトンパスを見事に修正し、好調な滑り出しを見せる。後輩からバトンをもらったのは、明大としてはラストレースとなった木村颯。「今年度やっとチームとして地力が付いてきたという感じがある。個人だけじゃなく4継とかチームで活躍できているんじゃないかなって思うところが増えてきた」。今年度の短距離メンバーは多くの種目で好記録を連発し、チームを活気づけた。4年生から1年生へ、明大の明日を担うバトンが渡る。下級生唯一の出走を果たした3走、川津。慶大がリードする状況での走りとなり「少し力んでしまったり変に相手のこと意識しすぎたりしてしまった部分があったので、反省点はかなりある」。決して後悔のない走りというわけではないが、その悔しさこそが自身を強くしてくれることだろう。今年度のリレー競技を締めくくるのは、短距離ブロック長としてチームを引っ張ってきた木村稜。抜け出した慶大を追い、早大、中大とともに表彰台入りを争う展開に。最後まで横一線のデッドヒートを繰り広げ、予選よりも遥かにタイムを縮め3着に滑り込んだ。「個々の総力を合わせたら、正直勝てるレースだったと思う。それができていない自分たちはまだ強豪じゃない」(木村稜)。実際、今レースでは他のレーンへの侵入が発覚し、後々失格になっている。
このメンバーでリレーを走るのは今大会が最後だ。「やはり木村二人(稜、颯太)の存在はとても大きい。4年間リレーに携わって引っ張っていってくれた。来年は自分が上級生になるので、これからは自分が(チームを)引っ張っていけるようにしたい」(松下)。4年生として、そしてエースとしてチームの最前で挑み続けた2人。その姿は後輩たちのこれからの挑戦を勇気づけてくれることだろう。明大が誇る絆のバトンリレーは、しかと次期エースに受け継がれた。
[石井遥]
試合後のコメント
木村颯
――チームとしての力が強くなった要因はありますか。
「それぞれがお互いに刺激し合いながら、どんどん頑張っていけたことが大きいと思います」
――後輩に向けてメッセージをお願いします。
「日本インカレで3位になれたことに甘えて満足しないでほしいです。真面目にめりはりつけて練習しろっていうぐらいです」
木村稜
――課題点はありましたか。
「やはり自分の強みはバトンをもらってからの加速だと思っています。ここで離して後半どれだけ走るかっていうところですが、今回の自分はあまり前半しっかりと出られなくて、いいところがない走りでした」
――ファンへメッセージをお願いします。
「明大のファンの方にはいつも大きな声援を送っていただいています。その期待に答えられるように自分自身も後輩も頑張っていくと思うので、ぜひ注目していただけるとうれしいです」
松下
――他大の走りはどのように映りましたか。
「慶大は飛び抜けて速かったです。前半までですでに前に出ていたのに、そこで(明大が)さらに前に出られなかったのは自分たちの責任だと思っています」
川津
――今シーズンを振り返っていかがでしたか。
「先輩方にいい経験をさせてもらったっていう部分がかなり大きいです。印象に残るレースも日本インカレでのものだったりするので、4年生が来年度いなくなるのは戦力不足になったり、メンタル的に不安になる部分っていうのは大きいと思います。しかしこれからは自分が(チームを)引っ張っていくという形にしていきたいなって思います」
関連記事 RELATED ENTRIES
-
堀颯がチーム内トップの快走 1万メートルで実力示す/MARCH対抗戦2023
競走 2023.11.24明大、青学大、立大、中大、法大の5校で争うMARCH対抗戦。世田谷246ハーフマラソン(以下、世田谷ハーフ)に出走した選手を中心に、積極的な走りで実力を示した。ハイペースな展開の1万メートルを経験したことは選手にとって自らの立ち位置を確認する良い機会となったに違いない。 ◆11・22 MARCH対抗戦2023(町田GIONスタジアム)▼❹明大 ▼男子1万メートル1組 1着 馬場 29分53秒31 自己ベスト 8着 新井 30分27秒89 初 11着 乙守 30分52秒83 初 18着 山内 31分28秒10 2組 9着 石堂 29分53秒96 自己ベスト 11着 窪田 29分56秒01 17着 室田 30分7秒15 23着 井坂 30分20秒65 3組 2着 堀颯 28分48秒86 8着 橋本基 29分21秒20 自己ベスト 4組 13着 尾﨑 28分50秒89 自己ベスト 15着 綾 28分56秒53 自己ベスト 20着 溝上 29分24秒34 1組目は馬場勇一郎(政経4=中京大中京)が組1着の快走を見せた。自己ベストの更新と29分台を目標としていた馬場はレース序盤から先頭集団に食らい付く。「5000メートル過ぎでペースが少し落ち着いたことでラスト1キロの時点でかなり余裕があった」。残り2周となったタイミングでスパートを仕掛けるとそれに続く者はなく、独走状態に。自己ベストを更新する29分台をマークし、明大の先陣を切った。 28分台の自己ベストを持つ選手も出走する3、4組目はよりレベルの高いレースが繰り広げられた。3組にエントリーした堀颯介(商2=仙台育英)と橋本基紀(商4=専大松戸)はいずれも序盤から先頭集団でラップを刻み続ける。レース終盤、橋本基が先頭集団から離れるも堀颯は変わらずトップ争いを続け最後の直線で2人をかわし、2着でゴール。「自己ベストを更新できず、2着と中途半端なレースだったが、ラストを上げ切れたのは良かった」(堀颯)と悔しさをにじませつつも収穫を口にした。橋本基も粘りの走りで自己ベストを更新。世田谷ハーフの疲労が残る中、チャンスをモノにした。 4組目で意地を見せたのは尾﨑健斗駅伝主将(商3=浜松商)。ハイペースで進む集団の後方に位置取ると、そこからじわじわと順位を上げていく。しかし、レース中盤「7〜9キロで1キロあたり3分前後に落ちてしまった」と先頭集団からこぼれてしまう。それでも、後方から追い上げてきた綾一輝(理工1=八千代松陰)を突き放し自己ベストを叩き出した。世田谷ハーフに続き駅伝主将としてチームを結果でけん引する姿は周囲の選手にとっても大きな刺激となったことだろう。 「1区間の落ち込みが命取りになるので、全員が平均的もしくはそれ以上に走れるような仕上げをしていきたい」(山本豪駅伝監督)。ここから箱根駅伝のエントリーメンバーは大きなレースに出ず、日々の練習や富津合宿などを通して調整を重ねる。自分を信じ前へと進み続ける彼らの視界に、箱根路は目の前まで迫ってきた。 [松原輝]第100回箱根駅伝まで、あと38日。※レース後のコメントは「紫魂不撓」にて掲載いたします。 READ MORE -
5人が自己ベスト更新 箱根駅伝に向け弾みをつける/上尾シティハーフマラソン
競走 2023.11.21箱根駅伝(以下、箱根)に出場する大学も多く出場した上尾シティハーフマラソン(以下、上尾ハーフ)。チーム内トップでフィニッシュの吉川響(文2=世羅)や期待のルーキー・大湊柊翔(情コミ1=学法石川)など5人が自己ベストを更新し、箱根に向けたメンバー争いは大詰めを迎えている。 ◆11・19 第36回上尾シティハーフマラソン(上尾運動公園周辺)▼ハーフマラソン 12位 吉川響 1時間2分31秒 自己ベスト 19位 児玉 1時間2分42秒 23位 大湊 1時間2分54秒 自己ベスト 27位 森下 1時間3分00秒 自己ベスト 44位 山本 1時間3分30秒 自己ベスト 46位 杉 1時間3分32秒 64位 古井 1時間3分59秒 自己ベスト 96位 齋藤 1時間4分43秒 166位 甲斐 1時間5分49秒 すっきりとした秋晴れのもと行われた上尾ハーフ。今月12日に行われた世田谷246ハーフマラソン(以下、世田谷ハーフ)と並び、箱根のメンバー選考に関わる重要な大会だ。多くの学生トップランナーが出場する中、明大からも箱根駅伝予選会(以下、予選会)に出走した9人がエントリーした。その中でもチームトップの快走を見せたのは吉川響。「ラスト5キロぐらいからチーム内トップの自覚があって絶対に死守したいと思っていたので残り数キロを走り抜けてトップでゴールできたことはいい経験になった」と振り返る。先月14日に行われた予選会に続いてまたもや自己ベストを更新し好調ぶりを見せつけた。 チーム内2位でゴールしたのは児玉真輝(文4=鎌倉学園)。「練習くらいの調子で62分30秒台に少し届かないくらいのタイムだった。点数をつけるなら90点くらい」と本調子ではない中で安定した走りを見せた。続くルーキーの大湊や森下翔太(政経2=世羅)、そして当日誕生日だった山本樹(営2=専大松戸)なども自己ベストを更新し、充実した内容となった今大会。「チャレンジングにやっていこうと言っていた。最初はハイペースだったが、みんな付いていってそこで粘ってある程度のタイムで帰ってきてくれたので良かったと思う」(山本豪駅伝監督)。季節の冷え込みとは反対に箱根のメンバー争いはますます熱気を帯びてきている。 箱根まで残り2カ月を切った。この先もメンバー選考の材料となるMARCH対抗戦が行われ、冬合宿も控えている。箱根8位入賞という目標に向け全員が闘志を燃やしている中、箱根路を駆け抜けるのは誰なのか。明大競走部のこれからに目が離せない。 [加藤菜々香] 第100回箱根駅伝まで、あと42日。※レース後のコメントは後日「紫魂不撓」にて掲載いたします。 READ MORE -
尾﨑が自己ベスト更新のチームトップ 駅伝主将として堂々の走り/世田谷246ハーフマラソン
競走 2023.11.13いよいよ箱根駅伝(以下、箱根)のメンバー選抜の季節がやってきた。今大会では尾﨑健斗駅伝主将(商3=浜松商)やケガからの復帰戦となった城戸洸輝(情コミ4=宮崎日大)ら4人が自己ベストを更新。また、多くの1年生が初めてのハーフマラソンを経験するなど、箱根出走のための布石を打った。 ◆11・12 第18回世田谷246ハーフマラソン(駒沢オリンピック公園)▼ハーフマラソン 18位 尾﨑 1時間04分02秒 自己ベスト 22位 溝上 1時間04分19秒 自己ベスト 31位 城戸 1時間04分43秒 自己ベスト 39位 橋本基 1時間05分02秒 49位 井坂 1時間06分02秒 59位 窪田 1時間07分00秒 60位 室田 1時間07分17秒 61位 馬場 1時間07分20秒 63位 杉田 1時間07分38秒 自己ベスト 64位 乙守 1時間07分39秒 初 66位 新野 1時間08分04秒 67位 山内 1時間08分04秒 初 68位 新井 1時間08分10秒 70位 鬼塚 1時間08分22秒 初 71位 石堂 1時間08分28秒 初 72位 角南 1時間08分47秒 76位 小林周 1時間09分06秒 初 90位 前田 1時間10分23秒 91位 曳田 1時間10分33秒 小雨がぱらつき、肌を刺すような寒さの中で行われた世田谷246ハーフマラソン(以下、世田谷ハーフ)。箱根まで残り2カ月を切り、駒大や青学大などの強豪校が多く出走した。各校の思惑が交錯する中、尾﨑が先頭集団でチームを引っ張る走りを見せる。レース後半は集団から離れてしまったものの、駅伝主将としての意地を見せタイムを大きく落とすことはなかった。万全とは言い難いコンディションであることを感じさせない快走で自己ベストを更新し、チーム内トップのフィニッシュ。63分台には惜しくも届かなかったが、チームの先頭に立つ者としての役目を十分に果たして見せた。「数字だけ見るとそこまで悪くないとは思う。しかし他大の選手に負けてしまっているので、物足りない部分もある」。箱根路で争うのは、あくまでも他大。「走る、走らない関係なく、どんな形でもチームの目標達成にはきちんと貢献したい」。一人の選手としてではなく、チームのために動く。その走りには3年生にして駅伝主将を務めるだけの覚悟があった。 チーム内2番手でゴールした溝上稜斗(商3=九州学院)も目標に掲げていた63分台には届かなかったが、自己ベストを約10秒更新。「しっかりまとめる走りをする」との言葉通りの走りを見せた。しかし箱根シード権常連校との実力差を痛感し「世田谷ハーフがピークではないと思っているので、箱根ではそういう大学と勝負できるようにもう一段階上げていきたい」とさらなる成長意欲を見せた。この結果がいい方向へ導いてくれることを期待したい。また、今年5月の世田谷競技会で足首を痛めDNFに終わってから久々のレースとなった城戸が自己ベストを2分以上縮め、チーム内3番手でフィニッシュ。ケガの影響でしばらくレースから離れていたが、9月末に練習を再開しここまで状態を上げて見せた。「世田谷ハーフ以降は量を求めつつ質の高い練習をして、箱根に向け積極的なレースをするための練習をしていきたい」。最上級生にして初のエントリーを目指す陰の実力者。エントリーメンバー争いのキーパーソンとなることは間違いない。 箱根のメンバー選考には、翌週11月19日に開催される上尾シティハーフマラソンおよびMARCH対抗戦での結果が判断材料の一つになる。限られた16枠を勝ち取り、箱根路で紫紺を背負うのはどの選手か。可能性は無限大だ。 [石井遥] ※レース後のコメントは後日「紫魂不撓」にて掲載いたします。READ MORE