笑いあり涙ありのラスト舞台 感謝の思いがあふれたアイスショー/明治×法政on ICE 2023

フィギュアスケート
2023.03.01

 2月26日、ダイドードリンコアイスアリーナにて明治法政 on ICE 2023(以下、明法オンアイス)が有観客で開催された。明法オンアイスは、部員が主体となってつくり上げるアイスショーで、今回の開催で5回目となる。有観客での開催は3年ぶり。今年は初の試みも多く見られ、観客を大いに楽しませる工夫が凝らされていた。ゲスト出演者も含む10人の4年生にとって大学卒業前の最後の舞台であり、スケート人生最後の演技となった選手もいる。パフォーマンスや企画で会場を盛り上げ、現役部員と引退生それぞれの感謝の思いが伝わるアイスショーとなった。

 

◆2・26 明治×法政on ICE 2023(ダイドードリンコアイスアリーナ)

 

[出演者の演技 第1グループ]

 現役生の出演者、ゲスト出演者、引退生の順に演技を披露した。6分間練習の間には選手のエピソードのアナウンスとともに名前がコールされ、プログラム以外の時間も楽しめる演出がなされていた。

 

 明大のトップバッターは江川マリア(政経1=香椎)。『ラストエンペラー』を披露し、余裕を持ってミスなくジャンプを決めた。観客に目線を行き届かせ、終始美しい演技を見せた。明大2番目には大島光翔(政経2=立教新座)が『Real?』を披露。踊り出せば観客から手拍子が沸き起こる盛況ぶり。ジャンプでは精彩を欠いたが、納得のいかない様子をそのまま振り付けにして表現し笑いを誘った。観客の応援を力に駆け抜け、リンクサイドに集まる撮影陣に近距離でアピールし、最後までユーモアあふれる演技となった。

 

 続いて松井努夢(政経3=関西)がシングルでの演技を披露。メリハリのある体の動きで振り付けが際立った。ふらつくような場面も見られたが、大勢の観客を前に一人『This is Mine』を滑り切った。本田真凜(政経3=青森山田)は紫の衣装で登場。大きくしなやかに全身を使い表現で観客を魅了する。回り切るまで美しさのあるスピンに拍手が送られ、持ち味を生かして『The Giving』を演じ切った。

 

 ゲストには4年生の古庄優雅(日大)と松下紗千(日大)を迎えた。演技直前には、指導をしていた先生方からのメッセージ動画が流れ、思いが込み上がりそうになる場面も。松下は締めくくりにふさわしい演技を披露。古庄は終始幸せを感じさせるような表情を見せる。演技後にはあたたかな拍手に包まれ、2人はリンクを後にした。

 

[出演者の演技 第2グループ]

 第2グループに入り明大と法大の引退生が登場。それぞれの演技直前には、後輩一人とリンクで指導していた先生からのメッセージ動画が流れた。演技前に目を潤ませる選手もいたが、曲がかかると思い思いの演技を見せた。

 

 引退生最初の演技は小川菜(文4=新潟南)。開演前のインタビューの際に、小川の母と祖父母が来場することを話してくれた。上京し一人暮らしを続けてきた小川にとって、大学生になってからの演技を生で家族に見てもらう機会は今回が最初で最後。「感謝の気持ちを込めて滑りたい」。その気持ちを胸にリンクに立った。完璧とはならずとも全てのジャンプを着氷させ、クライマックスまで力を込める。精いっぱいに『Never Enough』を踊り切った。


 (写真:『Never Enough』を披露する小川)


 今シーズン、ケガをしていた時期もあった岩永詩織(営4=明大中野八王子)。リンクサイドの仲間たちとタッチを交わし位置につく。勢いよく軌道に乗ってジャンプを決める。『愛の讃歌』の雄大なサビに乗り、伸びやかに滑り切る。演技後には観客に手を振りリンクを後にした。

 (写真:『愛の讃歌』を披露する岩永)


 松原星(商4=武蔵野学院)は『Hallelujah』を披露。冒頭で代名詞のサルコウとトーループの連続ジャンプをしっかりと決めた松原。ジャンプに入る際のまなざし、緩急のある腕の動作、最後まで抜かりない演技を見せた。演技後にはアンコールで『ファインディング・ネバーランド』のステップを披露。2016シーズンのFS(フリースケーティング)で、松原の中で一番印象に残っているプログラムであるという。最後まで心を込めてステップを踏み、観客を魅了した。

 (写真:笑顔を見せる松原)


 登場前に松原とタッチを交わし現れた佐藤伊吹(政経4=駒場学園)。淡いピンクの衣装と髪飾りを身につけ『ロミオとジュリエット』を披露。元気良く曲に負けない明るさで氷上を舞う。明法オンアイスの前に拠点のリンクでのエキシビションに出演していた佐藤。「体力が持つかどうか心配」と話していたが、その心配を感じさせない滑りを見せた。アンコールでは昨シーズンのFS『Tree of Life Suite』を披露。佐藤が過去最高と振り返ったシーズンのプログラムであり、会場を明るい空気に包んでいく。惜しみなく力を出し切り、観客から大きな拍手で見送られた。

(写真:にこやかに手を振る佐藤)


 最終滑走は明大の主将・山隈太一朗(営4=芦屋国際)。青に黄色のポケットチーフを入れた衣装で登場。『ラ・ラ・ランド』の楽曲が流れ出し、即座に世界観をつくり出す。ところが、音源トラブルが起こり一度ストップ。そんなアクシデントがあっても笑いに包まれる和やかな会場だった。気を取り直して最初から演技を始め、トリプルアクセルを見事に決める。生き生きと演技する山隈は弾ける笑顔を見せる。高速スピンも健在し、ダイナミックさを保って演技を終えた。アンコールでは『Somewhere in Time』の終盤部分を壮大なスケールをもって滑り切る。観客の目を釘付けにし、拍手が鳴りやまなかった。

 (写真:明法オンアイスを楽しむ山隈)


 すべての出演者の演技が終わると、明大と法大それぞれの後輩と主将が一緒にプログラムを披露した。チェロの旋律が奏でられる山隈のSP『Natural Songbook VIII』を、山隈と大島がともに演技し、大島は山隈の実際の衣装を身に付け力いっぱいに滑り切った。

 (写真:大島は山隈のSPの衣装を着て踊った)


[グループナンバー]

 明大と法大の引退生と現役生によるグループナンバー。堀義正(商3=新渡戸文化)が編曲を担当し、振付には服部瑛貴氏が携わった。楽曲に合わせた衣装、帽子やサングラスの小物も身に付けたメンバーたち。『Sing Sing Sing』の洒落た雰囲気をモノにし、観客は手拍子で盛り上げる。中盤では学年ごとに登場し、それぞれのパフォーマンスを見せていた。最後は山隈を中心に円になり踊る。普段のプログラムとは違った一面を見せ、大いに盛り上がった。

 (写真:グループナンバーを楽しんだ明大女子)


[引退生からのメッセージ]

 明法オンアイス最後は、4年生一人一人からメッセージを残した。それぞれの思いや感謝の気持ちが言葉になって表れる。明法オンアイスではアナウンスをする場面があった樋口新葉(商4=開智日本橋学園)も話をした。樋口は同期にねぎらいの言葉を掛けたほか、来シーズンに復帰することを伝えた。4年生全員が後輩たちからお花のプレゼントを受け取り、撮影が行われた。その後、山隈の締めくくりの言葉で明法オンアイスの幕が閉じた。

(写真:終演後のチーム明大)

 4年生は自身の挨拶をする中で、今回の明法オンアイス開催に向けて現役部員が力を尽くしていたことを話し、感謝を口にしていた。メッセージ動画や初の試みであるグループナンバー、パンフレットや会場運営など、計り知れないほどさまざまな準備を重ねていた。裏方も含めた部員たちの思いは随所に表れ、見る者にとっては楽しさや感動を得ることができたショーだったに違いない。つくる者の思いと見る者の思いが重なり合う空間はいつまでも温かかった。

 

[守屋沙弥香]

 

4年生のコメントはこちらからご覧ください。