総合優勝逃すも対抗種目で上位進出/全日本大学選手権
9月7日から5日間に渡って開催された全日本大学選手権(以下、インカレ)。最終日の11日は決勝が行われ、明大は優勝艇を出すことができず、悲願の総合優勝を逃す結果となったものの、対抗種目で上位入賞を果たすなど好成績を残した。
◆9・7~11 第49回全日本大学選手権(戸田ボートコース)
▼男子総合――3位
▼女子総合――6位
▼女子ダブルスカル(S磴B林原)――A決勝3位
▼男子ペア(S中条B佐々木丈)――A決勝2位
▼女子クォドルプル(S山吹3田口2青山B中山)――A決勝3位
▼女子舵手付きフォア(S小野寺3平松2荒川B樋口C岡部)――A決勝6位
▼男子エイト(S山本7武藤6岡本5藤井4金澤3上戸2門馬B平野C岡部)――A決勝3位
▼男子クォドルプル(S東坂3大竹2中山B寺井)――A決勝2位
▼女子シングルスカル(S清野)――B決勝2位
▼男子ダブルスカル(S辻B吉田)――B決勝3位
▼女子ペア(S田草川B山田)――B決勝3位
▼男子舵手なしフォア(S和田3松川2大久保B佐々木剣)――B決勝1位
▼男子舵手付きフォア(S杉本3阿部2市川B平田C鹿川)――B決勝3位
今大会の注目は連覇を目指す女子クォドルプル、さらには4月に行われた日立明三大学レガッタで宿敵・日大に勝利した男子エイトであった。大会前には新型コロナウイルス集団感染というアクシデントがあったものの、チーム全体としての出場を実現できた今大会。強豪復活の機運は高まっていた。
予選を1位で通過した女子クォドルプルは、序盤先行するも逆転を許し3位。「課題としていたところが出た」(星遼監督)。確かな実力を発揮し上位進出を果たしたものの、目標とする連覇には届かなかった。総合優勝に向け、是が非でも優勝をつかみたい男子エイトでは、先行しレースの主導権を握りたかった明大だが、中盤以降宿敵・日大に差を離され最終的に3位。「半艇身リードして最後の500メートルに入りたかった。日本一から呼ばれるには程遠かった」(岡本康誠主将・商4=宇和島東)。A決勝で入賞を果たす好成績を残したものの、レース後悔しさをあらわに。彼らが見据える先はあくまでも頂点であった。
他の種目に目を向けると、大会直前に結成したクルーで臨んだ男子ペアはA決勝2位の好成績。「自分的には100点のレース」と振り返るのは中條扇之介(商2=成立学園)。また女子ダブルスカルではA決勝3位で見事入賞。「大会前半は1000メートルで力尽きることが多かったが、今日は後半もリラックスしてリズムよく漕げた。5日間で1番のレース」(林原萌香女子主将・法4=米子西)。さらに男子クォドルプルは後半にスパートをかける、狙い通りのレース展開でA決勝2位に輝き、1年生主体の若いクルーで挑んだ女子舵手付きフォアでもA決勝進出を果たすなど健闘した。男子クォドルプルのクルーの一人の寺井昇平(政経4=米子東)が「最後の500メートルまで体力を温存できた」と語るように、鍛錬の成果を存分に発揮する好レースだった。
このインカレを最後に「真面目に練習に取り組んでいた4年生」(星監督)は明大端艇部を引退する。「次につながる『基礎』ができた大会」(岡本)の言葉通り、今季の集大成となるインカレは来期以降に期待が持てる、収穫の多い大会となった。今大会はコロナ禍ではありながらも有観客で開催されたことも忘れてはならない。「ここ数年は歓声もなく、淡泊なレースが続いた」(岡本)。最終日には立ち見が出るほどの大入りで、今大会を彩った。
目標とする総合優勝には及ばなかったものの、今大会では多くの種目で上位進出を果たし、確かな手応えと充実感を得ることができたであろう。しかし監督、選手が真っ先に口にしたのは「悔しい」の3文字。この1年間の努力、本気度を物語る、何よりの証拠だった。
[上瀬拓海]
試合後のコメント
星監督
――全体の結果を振り返っていかがですか。
「全体の結果は思い描いたものとは異なりましたが、選手全員よく頑張ってくれたと感じています」
――4年生は今日がラストレースとなります。
「4年生は物静かなところがあるのですが、真面目に練習に取り組んでくれたと思います。4年生は本当に淡々と練習に取り組んでいたし、男子エイトも半分は4年生で、実力的にもチームを引っ張ってくれたと思います」
岡本
――5月の全日本選手権から比べて、今大会はいかがでしたか。
「学生の中では勝負できるという感覚は持っていましたが、2位や3位ではなく、1位を取り切る力というのは練習量などを含め足りなかったかなと思います。日本一から呼ばれるには程遠かったのだと考えています。これが明治の現状だと思います」
――1年間主将を務められましたが、感想をお願いします。
「今季は〝時代の夢を破る〟というスローガンを掲げていました。日立明三大学対抗レガッタでは男子エイトで日大に勝利したことや、全日本選手権でも多くのクルーが決勝に進んだことなど、女子部も含めて良いスタートを切ることができた中で、インカレはこういう結果になり悔しい思いが強いです。しかし全員欠けることなく大会に出場できたというのは意義があったと思います」
林原
――女子主将として全体の結果についていかがですか。
「全艇が決勝に進出するというのが当初の目標でしたが、それが叶わず残念です。女子クォドルプルは昨年に続く優勝が見える位置まで来ていて、予選も1位通過することができただけに部全体として悔しいと感じています」
――後輩の選手たちに向けて、一言お願いします。
「力を全員が持っているチームだと思うので、がむしゃらに取り組みながらも部内で連絡を取り合うことなどはまだ足りていないと思うので、監督やコーチと密に連絡を取りながら、その力を艇速に変えていけるようにしてほしいと思います」
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