2年連続の団体入賞とはならず 車の不調に泣く/全日本学生ジムカーナ選手権

自動車
2022.08.24

 障害物が設置されたジムカーナ(舗装路)を走りタイムを競う今大会。全国から32校がモータースポーツの聖地である鈴鹿に集結し、ハイレベルな戦いを繰り広げた。明大は惜しくも2年連続の団体入賞とはならなかったものの、最後まで激しい入賞争いを演じた。

 

◆8・21 全日本ジムカーナ選手権(鈴鹿サーキット国際南コース)

▼男子団体の部 明大――9位

▼男子個人の部 常盤――16位 坂井――31位 田中――55位

 

 昨年度の同大会で団体6位入賞を果たした明大。今年度も団体入賞を目標に準備を進めてきた。しかし、大会直前の練習で思わぬトラブルが起こる。減速とシフトチェンジのタイミングにミスが生じ、ミッションと呼ばれる変速機の歯車が割れてしまったのだ。急きょ、ダートトライアル用のミッションに交換したが、本来使用するはずだったジムカーナ用のものに比べて加速性能が劣る不利な状況に立たされることに。また、カーブの時に左右のタイヤの回転数を調整するジムカーナ用のLSDが入っていないためコーナリング性能にも課題を抱える。そんな状況でも運転技術で劣勢を盛り返すべくレース前にコース取りやシフトチェンジのタイミングなどを選手間で共有し、本番に備えた。

 

 午前と午後で3人の選手が1本ずつ走り、それぞれの速いタイムの合計で団体順位を競う。明大は田中寛人(商3=桐蔭学園)、坂井遼(法3=東邦大東邦)、常盤啓太主将(法4=北園)の3人がハンドルを握る。迎えた午前の第1ヒート。1走の田中は前日からの雨で路面がぬれ、滑りやすい状況でもスタートから順調にレースを進める。だが、コース中盤の比較的長い直線を抜けた後に位置する、半径15メートルのコーナーが牙をむく。高速域からのブレーキングでフロントに荷重がかかり過ぎたことで後輪が滑り、スピンしてしまう。その後なんとかレースには復帰したものの大幅なタイムロスにつながった。2走の坂井は天候が回復し、路面が乾きつつある中の出走となった。「レース前は吐きそうなくらい緊張した」と語るも、パイロン(障害物)との接触やミスコースなどのミスをすることなく1分18秒69を記録し、確実にタイムを残す。各校のエースが集う3走には運転技術に関して部員からも信頼の厚い常盤がエントリー。4年間の集大成として臨んだ今大会は、あと一歩のところで個人入賞に及ばなかった昨年度の雪辱を果たすべく、強い決意で臨んだ。スタートから素早く加速すると高速コーナーやサイドターンの連続する区間も難なくクリアし、1分15秒91でゴール。一時は暫定トップに躍り出るほどの好タイムだった。パドックに戻る途中、集まった部員に常盤が力強いガッツポーズを見せる場面も。エースの走りで流れを引き寄せた明大は勢いもそのままに午後の第2ヒートへと突入した。

 

 雨の予報が外れ、日差しが強くなった午後。路面は完全に乾き、午前よりも攻めた走りができるコンディションが整った。しかし、この天候の変化は田中にとって不利に働く。「午前と路面の状態がかなり違ったので思うように修正し切れなかった」(田中)と悔やむも大きなミスをすることなく走り切り、1分19秒51をマーク。今年5月に行われた全関東学生ジムカーナ選手権ではスピンしてしまいなかなかタイムを残せてこなかったが、今大会は「最低限の結果は残すことができた」と次戦に向けて手応えをつかんだ。坂井は1本目でタイムを残したこともあり、2本目は「1分15秒台に入ること」を目標に掲げて挑んだ。目標には届かなかったものの、全体を通して安定したレース運びを見せ、1分17秒18を記録。この時点で暫定団体7番手に位置する明大の入賞争いの命運は、最終走者の常盤に託された。1本目で得た感覚を基に「少し一か八かの攻めをしようと思った」と序盤から積極的な走りでタイムを狙う。パイロンの密集する区間ではサイドブレーキを引く時間を最小限にし、素早く車の向きを変えることでタイムロスの少ない走りを意識。快調な走りで前半を折り返す。しかし、カーブから立ち上がった後の長い直線区間で悲運が襲った。直線上に置かれた2つのパイロンをすり抜ける場面で車とパイロンが接触したという判定を受け、5秒のペナルティが課せられることに。この結果2年連続の団体入賞とはならなかった。それでも、主将としてチームをけん引してきた常盤は個人入賞こそ逃したがチーム内トップのタイムを記録し、エースの意地を結果で示した。

 

 入賞ラインである6位の同大とは2.23秒の差がついた。1人あたりに換算すると約0.74秒。1秒にも満たないタイムを削り出す厳しい戦いの現実がそこにはあった。明大のゼッケンである106番をつけた車がトップチェッカーを受けるその日のために。自分たちに足りないものを見つめ直し、前を向いて進み続ける。

 

[松原輝]

 

試合後のコメント

常盤

――1本目で1分15秒91をマークされましたが、チームに与えた影響はどんなものがありますか。

 「車両に厳しい面があるのと、1走2走ともに経験が少なかったのですが、3人が遅いタイムに沈むよりは士気も上がりますし、チームを引き締めるような効果があったと思います」

 

――今大会を通して、主将として後輩たちに残すことができた点はありますか。

 「今年度に入ってから、ダートトライアルなどの大会が苦戦続きで上位争いの緊張感をあまり得られなかったので(今大会、入賞争いを演じたことで)団体個人ともにパドックやドライバーも緊張感を持って戦うことで、大会に臨む心構えを学んでもらえたと思います」

 

坂井

――結果を振り返っていかがですか。

 「個人は同じ状況、同じ車で走った先輩から1秒ほど遅れているので、来年に向けてその差を縮められるようにしたいです。団体に関しても昨年度は入賞したので、今年も団体入賞をすることで卒業される先輩に花を持たせてあげたかったです」

 

――常盤選手の走りをご覧になっていかがでしたか。

 「他大学に比べて車の戦闘力は劣っているのですが、その中からポテンシャルを引き出して無駄のない走りをしている点を、自分の運転にも生かしていきたいです」

 

――ご自身で感じた課題はありますか。

 「まだ全体的にペースが遅いところがあったり、逆に無理にスピードを出そうとしてロスになってしまったりするので、そのような細かなミスをなくせるようにしていきたいです」

 

田中

――今大会を振り返ってみていかがですか。

 「1本目がなかなか思うように走れず、団体入賞に届かなかった部分が残念でした。それでも2本目で最低限の結果は残せたと思っています」

 

――コースで気をつけたところはありますか。

 「パイロンが密集している区間で無駄にアクセルを踏んでしまったり、大回りをしてしまったりすることがないように気をつけていました」

 

――ご自身で感じた課題はありますか。

 「天候の変化への対応と、もう少しサイドターンがうまくできれば小回りがきいてタイムを縮められるといったところです。それと、ライン取りは常盤さんの方が出走前の慣熟歩行でコースのライン作りがうまかったので、その点が自分に足りない部分だったと思います」