大熱戦も準優勝 高かった東洋大の壁/日本学生氷上競技選手権

アイスホッケー
2021.12.30

 かすかに聞こえてきたラスト10秒のカウントダウン。その声はいつしか会場を包むほどになっていた。「3、2、1、ゼロ」。その瞬間、全てを空中へと放り投げて喜びが爆発した。歓声を上げながらベンチを飛び出すチームメート。大激戦を見届けたリンクの上、輝いているのは青のユニホーム。勝者としての明大の姿はそこになかった。

 

◆12・25~29 第94回日本学生氷上競技選手権(帯広の森アイスアリーナ他)

▼12・29 決勝 対東洋大戦(帯広の森アイスアリーナ)

明大5{2―4、2―1、1―2}7東洋大○

 

アイスホッケーの選手たち

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優勝が決まり歓喜に湧く東洋大の選手たち

 

 日本学生氷上競技選手権(以下、インカレ)、最終日最終試合。全国の大学のうち、たった2校だけが立つことを許される舞台だ。3年ぶりの優勝を目指した明大の相手は、今季春の関東大学選手権、秋のリーグ戦で王者となっている東洋大。今季3冠、そして公式戦無敗に王手を懸け、名実共に日本一の称号を得ようとしていた。第1P、序盤から東洋大の圧倒的な運動量に苦戦。「相手のバックチェックやフォアチェックが速く、自分たちのペースにできなかった」(FW佐久間雄大・政経4=白樺学園)。開始2分半で先制されると、その後も東洋大がパックをゴール前に集め続けた。そしてこぼれたところを確実に決められ、このピリオドだけで4失点。一方で「どうしてこんなにうまいんだ」(DF三浦大輝・法4=駒大苫小牧)と自画自賛する三浦大のゴールもあり2度追い付いたが、このピリオドを2―4で終えた。

 

アイスホッケーの選手たち

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華麗な同点弾を決めた三浦大

 

 続く第2P開始早々、FW丸山詳真(商2=北海道清水)のパスカットから佐久間へパックをつなぎ、カウンターのチャンス。FW中條廉(政経3=白樺学園)とのパックさばきで相手を振り切り、佐久間が空いたスペースに走り込む。そのまま相手GKの股を抜いてゴール。まさに電光石火の攻撃だった。「第2Pが大事だと思っていた」(佐久間)と、このプレーで試合は予測不能な展開に。その後1点を返されるも、強力な明大攻撃陣が機能。数的有利をつくり出し、FW唐津大輔(法3=日光明峰)からパスを受けたFW青山晃大(法2=武修館)が、この日自身2点目を奪取。「気持ちの強い部分を見せることができた」(DF青山大基主将・法4=釧路江南)。最高の舞台らしく互いの意地がぶつかり、両者一歩も譲らぬまま戦いの場は最終ピリオドに移された。

アイスホッケーをしている子供たち

自動的に生成された説明ゴールネットを揺らした青山晃(左)

 

 「勝っても負けても最後」(青山大)。第3P、最後の瞬間が近づく中、さらに緊迫した攻防が繰り広げられた。7分すぎに東洋大が追加点を決めるも、すぐさま丸山が取り返す。「僕たちの諦めない気持ちを表現できた」(DF廣田恵吾・営4=北海道清水)。そして1点差のまま迎えた残り1分34秒で、明大がタイムアウトを使用。とにかくゴールに集め、泥臭く点を取ることを共有した。そして残り1分で明大はGKをベンチに下げ、決死の6人攻撃に。これまで取ってきたどんな1点よりも価値のある1点を、死に物狂いで求めていた。しかしハイリスクな猛攻は、数十秒後に大学日本一となるライバルには通用しなかった。パックが乱れた一瞬を突かれカウンター。競り合いの末、相手選手が触れたパックは無情にもGK不在のゴールへと吸い込まれる。この時、残り24秒。そして興奮冷めやらぬ中、最後のカウントダウンが始まった。

 

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競り合いでわずかに及ばず決勝点を献上し、立ち上がれない三浦大

 

 この試合で引退する4年生はインカレでの優勝を知る最後の世代だった。さらにプロとして競技続行を決めている青山大や、今大会でアシスト王を獲得した佐久間、ベストDFに輝いた三浦大らタレントを擁する強力な世代だ。彼らが抜けた来季、明大は生まれ変わることを余儀なくされる。しかし、決勝で2得点を挙げて大会ベストFWに選出された青山晃など、実力のある下級生は多くいる。この日の悔しさを忘れず1年後に同じ舞台で笑って終えるため〝新生明治〟は新たな旅路に就く。

 

[佐藤慶世]

 

試合後のコメント

青山大

――準優勝の結果はいかがですか。

 「正直優勝はしたかったですが、明治のホッケー、そして試合を全力で楽しむことができました。本当に全てを出したので後悔はないです」

 

――4年間の思いを教えてください。

 「8人の同期でやってきて、全員が全員出場できていたわけではないですが、どこのポジションでも居なければならない存在です。心のどこかに同期への気持ちはあったので、最後に全員でプレーできて本当に感慨深いです。4年間を振り返りました。最高でした」

 

佐久間

――シーソーゲームでしたが、チームはどのような雰囲気でしたか。

 「みんな全く諦めずに、負ける気がしないという感じでやっていました。追い付こうという気持ちがチーム全体であったので良かったです」

 

――アシスト王に選ばれました。

 「今年度はゴールよりアシストの方が多くて、やはりこれが4年生なのかと思っていました(笑)。昨年度まではゴールの方が多かったですが、後輩を生かすプレーが増えてきたからアシストも増え、そういうのは自分の中でいい部分だと思います」

 

廣田

――試合を振り返っていかがですか。

 「最後ということもあって気合いが入っていましたが、自分の100パーセントの力を出せなかったのが正直なところです。悔しい気持ちは残りますが、完全燃焼できたし4年生としてチームを引っ張る姿を後輩に見せることができました。総じていえばベストゲームだったと思います」

 

青山晃

――兄であり主将である青山大と最後の試合でした。

 「自分が明大に入った一つの理由として、やはり兄がいて一緒にホッケーをやりたかったというのがありました。でも、あっという間に2年がたって終わってしまいました。このインカレに懸けた思いはとても強かったですし、最後の最後で一緒にホッケーができたことは良かったと思います」

 

GK中村柊志綺(政経2=北海道清水)

――試合を振り返っていかがですか。

 「4年生のために、絶対ゴールを守り切ろうという気持ちで試合に入りました。しかし(自分が)ふがいなくて、全く守り切れなくて、本当に申し訳ないなと思います」