三本の矢(1)サブGK・浅井和俊が残したもの
今年度、様々な記録を打ち立て、記憶に残るシーズンを送った明大。その中で、サブGK・浅井和俊(商4=明大中野)の存在は見過ごせない。絶対的な守護神の陰に隠れながらも、日々研鑽(けんさん)を続けた男は、10年の水球人生を最高の形で締めくくった。
自問と渇望の末に
「水球をやってきて、果たして自分はどんな結果を残したのか、何を残せたのか」。明大の正GK・今村大和(商4=明大中野)は中学、高校も同級生。絶対的な守護神の陰に隠れ、出場機会をなかなか得ることができなかった。「このまま辞めたら水球をやった意味があったのか」。自問自答の末、大学でもプールに身を置くことを決意した。「絶対に結果を残したい」。
ただでは転ばない
覚悟を持って選んだ水球の道。しかし、4年間の歩みは決して順風満帆にはいかなかった。入学してから3年間は、学生1部リーグで入替戦を経験。いつ2部に落ちるかわからない状況に「焦りはあった」。選手としても、常に前には今村の姿。「彼は僕のことを一切ライバル視なんてしていない」。一時期は人数不足からフィールダーに回るなど、苦しい時期は、長く続いた。
それでも懸命に泳ぎ続けた浅井。今村を「自分の師」として、技術、考え方を吸収した。また、フィールダーの経験も成長の糧に。「GKに比べて(フィールダーは)視野が狭くなりがち」。全ての選手の気持ちを理解し、GKとしても着実に力を付けていった。
水球人生最高の年
そして迎えた大学最終年。〝明治水球〟は大きく大きく飛躍した。新戦力の加入に加え、例年よりもミーティングに力を入れたことで強豪を撃破。学生1部リーグでは、史上初となる準優勝を果たした。
偉業達成の結果、4年間で初めて出場権を手にした日本選手権予選。しかし、今村が就職先のテストで離脱という事態に襲われる。ここで、抜擢(ばってき)されたのが浅井だった。4年間、いや10年間待ち続けた苦労人が手にした、最後の大仕事。「最後に、一番いいプレーができた」。社会人を相手に、見せた互角以上の戦い。「浅井がいてくれて助かった」(熊谷郁主将・営4=明大中野)。チームは18年ぶりに、国内最高峰の大会・日本選手権本選へ足を踏み入れた。
「水球をやってきて、果たして自分はどんな結果を残したのか、何を残せたのか――」。浅井和俊は記録と、記憶と、そして栄光を残した。
[飯塚今日平]
◆浅井 和俊(あさい・かずとし)東京都出身。商4、明大中野高。4年間で得たものは事前準備の大切さ。173センチ・68キロ。
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