「バラバラでもみんなが日本一へ必死でやっていることはお互いが分かっている」松下主務に聞くラグビー部の現状と今後
日本中からスポーツの灯が消えた。学生スポーツも例外ではなく、硬式野球の東京六大学春季リーグ戦など各大会の延期や中止が相次いでいる。ラグビーでは、関東ラグビー協会が関東大学春季大会の中止を発表。先が全く見えない混沌の中でラグビー部はどのような対応を取っているのか。松下忠樹主務(営4=明大中野)に現状と今後を伺った。
(この取材は4月20日、電話で行いました)
――まずラグビー部の現状を教えてください。
「全体練習はやっていないです。大学の方から活動禁止のお願いが来ているので、大学の意向を踏まえて、全体での練習は禁止という形をとっています。しかし、国が『外で運動するのはいい』と言っているように、個人でグラウンドを走ったりとか、固まらず1人でウエイト、筋トレをしたりなどは認めています。選手によっては走ったり、パスしたりキックしたり個々人の話にはなってしまうのですが、体を動かしている選手はいます。大学にも確認しながらですが、グラウンドを走ったり、個人個人が体を動かす程度は認めています」
――寮には部員全員が残っているのでしょうか。
「寮で練習は続けていたのですが、緊急事態宣言が出される3日前に地元に帰りたいかの希望を取りました。帰りたいという選手は帰ってもらって、例えば就職活動中の部員であったり、地方に帰ってもなかなか自分だけではトレーニングができないという選手は寮に残って、個人でトレーニングしています。人数的には半分半分くらいです。半分くらいが地元に帰って、半分くらいが残っています。幸いなことに寮の食事はこういう状況にもかかわらず提供していただいています。食事は寮で出るので、外出禁止という形ながらも不自由はなく、過ごせています。寮に長い時間いる分、自分の時間が増えて、自分を見つめなおすいい時間になっていると思います」
――地元に帰っている選手にはどのような指示が与えられているのでしょうか。
「トレーニングに関しては藤野健太S&Cコーチから体の動かし方やトレーニングメニューについてLINEを通して共有しています。ランニングをする際にも、今はスマホで何キロ走ったかなど測定できるので、チェックしています。ラグビーはやはり体が大事なので、管理栄養士さんを中心に、週2回体重を量ったり、食事の写真を送ったり、定期的に報告させるようにしています。リーダーズグループによってはZoomを使って4年生が中心となり、ミーティングをしているグループもあります。それは選手が自発的にやっていることなので、4年生がうまく引っ張っていってくれています。地方に帰っている人、寮に残っている人をZoomでつないで、双方のトレーニングの報告をしています」
――部員の健康管理、体力管理は部でやっているのですか。
「そうですね。管理というほどでもないですけど『もっとこうした方がいいのではないか』というスタッフからのアプローチはしていかないといけないと思います。どうしても1人だと自分の体力をキープすることは難しいと思います。こういう状況ですけど、本来であれば、ちゃんと練習している期間だということを忘れずに、取り組むことが大事です」
――部員同士の連絡は頻繁に行っていますか。
「Zoomはまだそんなに頻繁ではないですけど、これからもっとやっていこうかなと思っています。この間はLINEを使って『週平均どの程度動いていますか?』とか『トレーニングする環境はどのくらい整備されていますか?』などのアンケートを取りました。なかなか自分で追い込めていないというフィードバックが返ってきた人には個別にS&Cコーチからアドバイスをしてもらっています。ラグビーという競技において、この期間で上げられるのは体づくりとフィットネスが大きいです。1人でラグビースキルを上げるのはかなり難しいです。つまり、今はもう一度体づくりに立ち返ることが重要だと思います。その思いでみんな取り組めているのではないかなと思います」
――田中澄憲監督をはじめ各コーチからなにか言葉はありましたか。
「澄憲さんの方からは、全体LINEで10日経った後くらいに『そろそろ気が抜けてくる頃だけど、1人1人日本一の目標を忘れずに行動してください』というような言葉がありました。残ったメンバーがどれくらい動いているかは帰ったメンバーも分かっているので、刺激をもらって『もっとやらないと』と全員がお互いに思ってくれればいいと思います。コーチ陣からのアプローチに関しては、映像を見て、試合に対して、このチームはこういう戦術を取ったというような分析をBKはやっています。実際にトップリーグの試合を見て、良いところ、悪いところを見つけて、ナレッジを高められるような活動をしています。普段、練習が立て込んでいると、そういうところにフォーカスする時間が取れないのですが、時間があることを逆手にとって、BKは注力できています」
――春シーズンは軒並み中止です。モチベーション管理は難しいですか。
「先が見えない、試合があるかも分からないという状況です。そういう中で自分で追い込まないといけない練習をして、状態をキープ、より良くしていかないといけないということを近い目標がない中で行うのは、本当に高いメンタリティが必要です。1人だけではなかなか続けられなくても、チームでこうしてバラバラな状況でも1人1人が日本一という目標に向けて必死でやっていることはお互い知っているので、自分も頑張らなきゃなと思ってやってくれていると思います。ただ、モチベーションの部分はなかなか難しいです」
――現時点で八幡山グラウンド、他大グラウンドでの試合予定もありませんか。
「なにもないです。春シーズンは今のところ全て中止です。夏合宿は予定しているのですが、大学の授業日程もずれているので大学のセミナーハウスを借りられるのかも分からないですし、不透明な状況です。試合は何もなくて、練習もいつ再開できるのかも分からないです」
――現時点でいつからチーム練習に戻すかという目標はありますか。
「正直、スタッフの中でそのようなことも話せていません。練習の開始がどこからで、一定の期間があり、対外試合だという話なので、最初の地点が見えない限り、その後のスケジュールは立てようがないというのが正直な気持ちです。しかし、もともと、この時期は個人にフォーカスする期間でした。フィジカルの部分、ナレッジの部分、個々人レベルアップできると思います。しっかり1人1人意識して、取り組んでくれればいいと思います」
――最後に、この休止期間をプラスにとらえられる面はありますか。
「今までであれば練習メニューはコーチが組んでいたので、どちらかというとやらされているというか、練習メニューを深く考えることはありませんでした。この期間になって、1人1人が自分に何が足りていないのか、これまで以上に考えて、自分で取り組まなければいけないので、主体性の部分にフォーカスできると思います。しかし、このことは表裏一体の部分があると思います。今まで言われてきたことが無くなったということは別に何もしなくてもいいということです。つまり、個人の意識の高さに委ねられてしまうので、1人1人が自覚を持って取り組まなければいけないと思います」
――ありがとうございました。
[上松凜助]
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