(3)松平有紗

合気道
1999.01.01
(3)松平有紗

 明大合気道部は、全員が一般入部部員。そのため、大学から合気道を始める部員も多い。勝敗の無い武道、合気道という独特の世界へ踏み込んだ部員の気持ちとは――大学から合気道の道を歩み始めた松平有紗(法2)の胸中に迫る。

 「武道に興味があったけど、自分が体育会合気道部に入るとは思わなかった」。

 すべての始まりは、大学入学直後の春。「勧誘されたことがきっかけで、合気道部に入部した」。中学は美術部、高校は箏曲部(琴の部活)と中高では文化部一本。この勧誘は、それまで合気道に全くかかわりのなかった松平にとって、今後の大学生活を大きく変えるきっかけとなった。

 「戦うことが目的じゃないところも合気道の魅力。合気道の流れるような動きには惚れ惚れしてしまう」と語る彼女。相手との協力により美しい演武が成り立つその独特の空間に魅了されていくのに、時間はかからなかった。

 合気道に魅了されていく一方で、入部後に感じたことは伝統が積み重ねられた“体育会合気道部”としての厳しさ。「もし誰か一人でも身がたるんでいれば、連帯責任として全体でのトレーニングが行われる」と話すように自分一人の行動も、全体へと影響してくる。部での行動に伴う責任はとても大きく、常に責任感を持って行動することが求められた。こういった厳しさが伴う日々の稽古など、必ず自分の糧になると自身でしっかり受け止めていた。しかし、それまで体育会とは無縁だった松平にとって、気持ちがくじけてしまいそうになったこともあるという。   

 そのとき、部員という名の“仲間”が彼女を支えていた。「特に同期は“友”なんてものじゃなくて仲間で戦友。自分が成長していく上でもかけがえのない存在。この存在を手に入れることができたのは体育会合気道部だから」。何かミスをしたら素直に怒り、悪いことは悪いと指摘してりアドバイスをくれるその存在は、松平にとって今や必要不可欠のものとなった。

 なぜ、合気道を続けているのかという質問を投げかけた。「合気道が好きだから。絶対、最後までやり抜く」。

 シンプルながら心のこもった回答。彼女のまっすぐな目からはしっかりとその気持ちが伝わってきた。楽しいことばかりではない。決して平らな道ではない。けれども、彼女にとっての合気道は単なる武道にとどまることなく、心の成長を育む大切な存在となっている。

 合気道が好きだ。その気持ちを大切にしている彼女の合気道生活はこれからさらに輝きを増していくだろう。

◆松平有紗 まつだいらありさ 法2 国学院久我山高出 153㎝