土壇場で得た2位/全関東学生ダートトライアル選手権

自動車
1999.01.01


白熱のレース展開

 「練習から手応えがあり狙えるかなと思っていた」(柴田主将・商4)。上級生不足で早い時期からレースにでていた五十嵐(商4)・柴田主将・磯崎(理工4)は最終学年となり経験が多い。それでも向上心を持ち今回は6月中に3度もサーキットに通い練習を重ね、万全の状態でレースに臨んだ。そればかりで無く新しい車を投入し、その車で様々な調整を行って最善の状態にして試合に備えた。ヒトもクルマも最高にして試合へと臨む。後は本人たちがどんなレースをするかだったのだ。
 そして迎えた当日。一本目、最初に走るのは五十嵐だ。前走チームの車両トラブルで待たされながらも「目の前のことに集中する」(五十嵐)と集中力を切らすことなく走り終える。「3人が3人の役割を果たすだけ」(柴田主将)。残り3人も抜群の安定感を見せ、本学は前半を3位の好成績で折り返した。
 しかし、後半は急にレースが荒れ始める。優勝候補であり前半2位の慶大がクラッシュ!フロントガラスが大破し走行不能となった。慶大を筆頭にして多くのチームが棄権していく。そんな中、ダークホースであった中大が好タイムを叩き出し、土壇場の快走で明大を逆転し3位に躍り出た。「古豪復活か」、場内にアナウンスの声が響く。本学に残るのはエース磯崎。「慶応・早稲田のエースと肩を並べる実力を持っている」(宮鍋監督)。最後を走る磯崎は、チームの期待を一身に背負う。
 ついに磯崎のスタート。スタートフラッグが振れたのと同時に車は爆音を立てて進む。これまでの練習や車の整備を続けた部員の期待が背中をおす。トップスピードにのった車は砂をかき上げて加速する。最終コーナー駆け抜け。ゴール。
 タイムが発表されるまで、じりじりとした緊張感がチーム内に満ちる。そして叫ばれたその結果。チームを2位へと躍進させる1分39秒29の好タイム。チームからは歓声があがった。
 「部が一体になった気持ちのよい試合だった」(柴田主将)。前回4位という悔しさを味わい、うれしさも一塩だ。「成績が出ればチームがまとまり、チームがまとまればよい結果が出る」(磯崎)。そう言った後に「2位は上出来です」(磯崎)と笑顔をこぼした。
 今回の好レースを糧に次回はさらなる高みを目指す。次こそは表彰台の中心を奪取だ。

縁の下の力持ち達

 コンマ1秒を争う自動車において、車の整備は試合の勝敗を分ける重要な要素だ。「普段の整備からレースは始まっている」(柴田主将)。日頃から、整備の大切さを浸透させようとしている。サスペンションの調整など、部員は日頃から余念がない。
 今大会、前半は3位で終えた本学。お昼の休憩中、部員が車に集まる。排気のトラブルで馬力が落ちてしまったのだ。車を持ち上げ、体を車の下に滑り込まし裏の部分を真剣に点検をする。テープを貼り応急処置を済ませた。この間、出走の3人はレースの疲れを癒しながら、その様子を見守っている。「部員が頑張り、安心して走ることができた」(磯崎)。三人は全幅の信頼を寄せている。幸いにもそれは大きな故障ではなく無事午後のレースを走り、2位という好成績を収めた。「夢を見させてくれてありがとう」(高橋・政経4)。いつもピット作業の中心にいた男は満面の笑みでそう語る。バックの頑張りが好走を支える。自動車の快走の陰にはバックの汗が隠されている。