「雲外蒼天」 意志を継ぎ再び栄冠を目指す/全日本学生大会総括

少林寺拳法
2018.11.08

 昨年46年ぶりに全日本を制覇した明大は、連覇を懸けて挑んだが、結果は惜しくも総合2位。それでも「やり切った」(金親優希主将・政経4=桜林)と、すがすがしい表情で4年生は武道館を後にした。

突きを繰り出す根本(右)とそれを受ける鈴木

 「全部出し切った。やってきたことに後悔はしていない」(根本航平・法4=千葉北)。男子初段の部に出場した根本・鈴木雄大(法3=明大中野)組。予選を2位で通過し迎えた本戦。一段と気合いのこもった演武を披露したが、結果は3位。今大会前「根本先輩を優勝させる」と、何度も口にしていた鈴木は「悔しい」の一言。しかし、結果を悔やむ後輩とは対照的に、根本は晴々とした表情を浮かべていた。

 明大少林寺拳法部は部員のほとんどが一般生であり、大学から競技を始めた人も少なくない。根本もそのうちの一人だ。1年次は試合に出られず「モチベーションも低かった」(根本)が、2年次からは多くの試合を経験。先輩・同期・後輩と共に少林寺拳法に勤しむ4年間で見えてきたのは、精神的な部分での成長だった。根本が後輩と組む最初で最後の全日本学生大会。「後輩たちの理想像になりたい」(根本)と後輩のためになることは何かと考え大会に臨んだ。その姿を間近で感じていた鈴木は「根本先輩の熱い思いを、自分の背中で後輩に伝えていきたい」。根本自身の競技生活はここで一度幕を下ろすが、彼の少林寺拳法に対する熱情は今後も拳士たちに受け継がれていく。

気迫のこもった演武を披露した上野(右)・木村組

 「努力は裏切らない」(上野絵美・営4=志学館)。その言葉には、ひたむきな性格が表れていた。下級生の頃は「良い結果が残せなくて悩んでいた」(上野)。初めての学生大会は5位、その年の全日本は3位だった。「いつか1位を獲りたい」(上野)。そこで始めたのは、自らの演武や他大学の演武を研究し、それを通して自分自身と向き合うこと。加えて、週5日の練習も「1日休むと焦ってしまう」(上野)と、毎日のように修練に励み続けた。そして、木村奈菜子(政経3=東邦大東邦)とペアを組み女子初段の部に出場した最後の学生大会。「勝つしかない」(上野)、その一心でつかみ取った全日本で自身3度目の優勝。彼女の努力は間違いではなかったと証明された瞬間だった。大会終了後、上野は後輩たちに対し「可能性は無限に広がっている。何事にも果敢に挑戦してほしい」とエールを送った。


 今年の全日本学生大会のスローガンは〝雲外蒼天〟(うんがいそうてん)。困難や試練を乗り越え、努力し克服すれば快い青空が望める、という意味だ。今大会の結果は拳士それぞれだが、総合連覇には届かなかった。しかし未来は明るい。9月の新人大会では2年連続で新人育成賞に選出されるほど下級生は力を付けてきている。1年間、部を支えた幹部の5人は引退するが、強く育ったつぼみは来年必ずこの舞台で大輪の花を咲かせてくれるに違いない。


[藤山由理]