中野、上野、佐藤匠の3人が優勝 冬に向け弾みをつける/東日本学生個人・新人選手権

ウエイトリフティング
2017.09.11
 夏の合宿を終え、心機一転臨んだ今大会。明大からは18人の選手が出場した。個人選手権では69kg級の中野景介主将(営4=須磨友が丘)、85kg級の佐藤匠(政経3=宮城農)、+105kg級の上野祐脩(政経4=東京学園)の3人が優勝を果たした。また、表彰台を逃した選手も自己ベスト記録を更新するなど、夏の成果が見える大会となった。

◆9・8~10 第41回東日本学生個人選手権・第14回東日本学生新人選手権(日大生物資源科学部体育館)
▼個人62kg級
 3位 錦織
 4位 後藤
 5位 北出
▼個人69kg級
 1位 中野
▼新人69kg級
 6位 大畑
▼個人77kg級
 3位 齋藤
 5位 佐藤右
 15位 朽名
▼新人77kg級 
 5位 竹川
 6位 畑中
 9位 寺澤
▼個人85kg級
 1位 佐藤匠
▼新人85kg級
 2位 扇本
 6位 戸田
▼新人94kg級
 2位 河村
 6位 中村
▼個人+105kg級
 1位 上野
 3位 古山

[個人62kg級]
 本調子ではないものの、さらなる伸びを予感させた。体に負担のかかる減量を避け、普段より一つ上の62kg級に出場した後藤将(政経4=県立川口)。表彰台は逃すも、スナッチ98kg、ジャーク130kgを挙げ4位となった。直前のアップで調子が上がり切らず、スナッチ1本目では「余裕で取れるはず」の93kgに失敗。崩れかけたが、出場選手が多かったことが幸い。時間が空いたことにより3本目でなんとか立て直し、上位に食い込んだ。夏に肩甲骨を痛め、ケガに苦しむ中だが合宿をきっかけに「上り調子できている」。スナッチ、ジャークともにさらに突き詰め、より好記録を目指す。12月のインカレは後藤にとって「ウエイト人生最後の大会」。チーム、個人ともに優勝し華々しい集大成を飾りたい。

 復帰戦で活躍を見せた。スナッチ108kg、ジャーク124kgを挙げ3位に入賞した錦織亮(政経3=米子工)。昨年の4月に痛めた半月板の手術を受け、約1年ぶりの大会出場だった。それでも同階級に出場した後藤や北出光茂(政経2=大阪ルネサンス)とのアップでは「とても楽しくできた」とリラックスして臨んだ。同時に先輩、後輩から刺激を受け、スナッチ、ジャークともに自己試合ベスト記録を更新。ジャークでは自己ベスト記録である128kgに触るなど、復調をアピールした。12月のインカレまでの目標はスナッチ115kg、ジャーク140kg。課題と向き合いながら「練習をもっと積んで」目標高く上を目指す。

 昨年の新人選手権で優勝を果たした北出は個人選手権に出場。後藤と同じく普段より一つ上の階級で出場し、スナッチ100kg、ジャーク120kgで5位となった。東日本インカレ時と同様、膝と手首のケガが完治していない中だったが、スナッチでは自己新記録である100kgに成功。目標としていた記録の達成に「次につながる」と、大きな成果を得た。一方で、ジャークは1本目と2本目の間に約10分の間が空き「崩れてしまった」。普段、高い成功率を誇る北出だが、ジャークは1本成功に終わり、思うような試技はできなかった。団体メンバーとして活躍も期待される北出。「次は後藤先輩を超えられるように」。身近な目標を目指し、さらなる活躍を誓う。

[個人69kg級]
 悩める主将が遂に真価を発揮した。普段より一つ上の69kg級に出場した中野主将。苦手としている減量をせず「ありのままの自分で」臨んだ今大会。大学入学後自身初となる6本成功を決め、さらにはスナッチ、ジャークともに自己試合ベスト更新に成功。2位を20kg突き放し1位に輝いた。4月から新チームの主将となり「いろいろ抱えてしまった」。就活や部の悩みが試技にも影響し、思うような結果が出せずにいた。しかし、就活も落ち着き、部もまとまりを見せ始めたことで「余裕を持てるようになった」。夏の練習の成果もあり本来の実力を見せつけた。今月末には国体出場も控える中野主将。社会人に混ざり「多くのことを吸収してきたい」。そして記録なしに終わった昨年のインカレ、今年の東日本インカレのリベンジを果たす。主将として臨む最後のインカレに向けて挑戦が始まる。

[個人77kg級]
 最悪のコンディションの中でも意地を見せた。朽名泰河(法4=名城大付)は内転筋の肉離れを抱えたままの出場。痛みが走る中だったがスナッチ75kg、ジャーク120kgを挙げた。特に、自信のあるジャークで2本目を失敗したことで「悔しくて痛みを忘れた」と3本目はふらつきながらも成功。「悔いを残さないように」。ラストシーズンにかける強い思いを見せた。日に日に引退が近づく中「大きな目標はジャーク150kgを達成すること」。いち早くケガを直し、復帰を目指す。

 現状打開のきっかけをつかんだ。スナッチ123kg、ジャーク148kgを刺し3位入賞を果たした齋藤竜磨(農4=金足農)。今年に入り、記録更新がジャークの1kgのみに留まっていたが、今大会でスナッチの自己新記録を更新。明るい兆しが見えた。一方で夏の合宿で力を入れて取り組んだジャークは「調子が悪かった」。満足のいく結果とはならず肩を落とした。記録も成績も「まだまだ」としながら「いい流れはある」。目標とする12月のインカレ出場を果たすため、今回得た成果、課題の両方に向き合っていく。

 悔しさが成長につながっている。ケガの影響で約5か月ぶりの大会となった佐藤右規(政経3=宇佐)。スナッチ115kg、ジャーク148kgを挙げて5位となった。本領発揮とはいかなかったが、ジャークでは自己新記録である156kgを持ち上げるなど好調ぶりをうかがわせた。7月には、自身が出場できなかった東日本インカレでチームが6位に終わったことで「悔しくて火がついた」。夏から練習にも一層身が入り「最近よく頑張っている」と同プラットの朽名も太鼓判を押す。上級生として迎えるインカレで、今度こそ活躍を誓う。

[新人77㎏級]
新人77kg級には竹川夏樹(法3=川口)、畑中佑介(法1=榛生昇陽)、寺澤寿喜(営1=滑川)の3人が出場した。竹川はスナッチ114㎏、ジャーク141㎏、畑中は119㎏、ジャーク136㎏で、ともにトータル255㎏。今年度より導入された「記録が同じ場合、先に記録した方の順位が上」というルールのもと、畑中が4位、竹中が5位となった。寺澤はスナッチ103㎏、ジャーク130㎏、トータル238㎏で8位だった。
「だんだん調子が上がってきている」と竹川。2年生になってから不調に悩み、記録が落ちていた。しかし、今回ジャークで自己ベストを1kgを更新。10月の全日本学生新人選手権ではスナッチ120㎏以上、145㎏以上を狙う。

 東日本規模の大会は大学初参戦の畑中は、自己ベストをスナッチ1kg、ジャーク3kg更新した。7月の東日本インカレ以降、中田(健太郎氏・平25政経卒)コーチから指導を受けるようになった。「練習は厳しいが、濃い練習ができている」と充実の夏を送った成果が表れている。

 寺澤は今大会が大学初。入学後はケガでまともな練習ができず、治ったのは6月。リハビリ期間に取り組んだ下半身の補強とフォームの見直しが、徐々に数字に表れ始めた。畑中と同様、中田コーチの指導のもと積極的に鍛えてきた。今後の課題は「パワーを付けることと試合で緊張しないこと」。1か月後の全日本新人では、自己ベストを上回るスナッチ115㎏、ジャーク140㎏を記録するのが目標だ。

[個人85㎏級]
 夏の大躍進だ! 85㎏級に出場した佐藤匠はスナッチ127㎏、ジャーク161㎏、トータル288㎏。大学初の金メダルを手にした。「記念すべき優勝。両親にも報告しようと思います」とはにかんだ。7月後半から8月22日までのオフ期間も母校の高校でほぼ毎日練習。膝に多少の不安を抱えながらも、それ以外は好調。体重増加も順調に進み、大会前は調整に切り替えず好コンディションのまま突っ走った。来月には国体出場、その先にインカレを見据える。「トータル300㎏取れれば表彰台が見えてくる。1点でも多く取りたい」。頼もしく、力強く、団体戦での貢献を誓った。

[新人85㎏級]
 新人85㎏級には扇本崇聖(政経1=名城大付)、戸田樹(政経2=白鴎大足利)の2人が出場した。
 苦し紛れの銀獲りだ。扇本はスナッチ120㎏、ジャーク150㎏、トータル270㎏で2位。「あまりいい結果ではない」と表情は浮かなかった。8月23日から行われた約1週間の合宿では初日に手首をケガ。ようやく復帰したと思えば、大会直前に体調を崩し、一昨日まで寝込んでいた。オフ期間に母校の高校で恩師・山中裕次先生に練習を見てもらい記録を順調に伸ばしていただけに、夏後半の失速が痛かった。それでも、3週間ほど実践から遠ざかっていた割には「成功率は悪くなかった」と好材料も。同階級で高校時代のライバル・西村(中大)がスナッチ、ジャーク、トータル全てで大会新記録を樹立したことを受け、「次は勝ちたい」と言葉に熱がこもった。

 戸田はスナッチ100㎏、ジャーク125㎏、トータル225㎏で8位。「全然だめでした」と肩を落とした。8月は溶連菌を患い、腰のケガも引きずっていた。「体調管理、メンタル全て自分の悪いところが出た」。同期、後輩が順調に記録を伸ばしているのを横目に焦りを隠せない。「今は悩む時期かと思います」。一歩ずつ、前に進む。

[個人105㎏級]
 個人105㎏級には中島要(営3=栃木湘南)、元木雅人(農3=奈良朱雀)、三浦祐暉(法3=杵築)の3年生3人が出場した。
 急ピッチで仕上げてきた。中島はスナッチ120㎏、ジャーク155㎏、トータル275㎏で4位。オフ期間は諸事情により本腰を入れて練習することができず、チームメートに遅れをとった。しかし合宿終え、大会まであと1週間に迫ると「短い間だったがフォームを見直せた」と技術面を修正。ジャークは3本成功でまずまずの成績を残した。バランスの悪さ、前のめりになるフォームを課題に挙げ、「脚の筋肉を背筋が足りていない」と分析。次は学生選抜の規定記録であるトータル285㎏を目指す。

 スナッチで本領を発揮した。元木はスナッチ131㎏、ジャーク140㎏、トータル271㎏で6位。この夏にホームを改善した成果が出た。「握り幅を広げて、足幅を狭めた」。デッド(床から重量を引き上げる動作)がしやすい足幅、もぐり(バーベルの下に入る動作)やすい握り幅を自ら模索。一新したフォームで、次なる目標はトータル290㎏。飽くなき向上心で臨む。

 力を出し切れなかった。三浦はスナッチ120㎏、スナッチ145㎏、トータル265㎏で8位。「動き自体は前より良くなっているけど、今日は思うように動かなかった」。同階級に出場した同期2人にリードを許す形となった。「体重を増やすこと、スピードと動きの精度を高めること、あとはメンタル」と三浦。良きライバルであり良きチームメートである2人に、次は勝つ。 

[個人+105㎏級]
個人+105㎏級には上野、古山翔太(政経2=金足農)の2人が出場した。
新記録の夢には届かなかった。上野はスナッチ145㎏、ジャーク190㎏、トータル335kgで1位。2位の川村(日大)に10kg差を付けての堂々の優勝だった。ただ、ジャーク2本目、3本目で挑戦した201㎏は成功ならず。「手応えはあったんですけど…」。8月後半の合宿で自身初となるジャーク200㎏に成功し、大会4日前にも再び成功。オフ期間は「今年が最後だから無駄にしたくない。今までは記録が落ちない程度に練習していたけど、今年はオフ期間にパワーアップできるように練習した」とフル回転の夏を過ごした。また8月には警視庁で社会人選手に交じって練習する期間も。一回りも二回りも成長した姿で、201㎏を成功させる青写真を描いていた。しかし、ジャーク1本目からすでに1位が確定していたため試技が連続となり、十分な休息を得られないまま2、3本目を迎え、惜しい結果となった。それでもスナッチ145㎏は以前の試合ベスト142㎏から3kg更新と成長をみせた。「国体もあるけど、最後はインカレなので」。12月の集大成に向けて、全てを尽くす。

古山はスナッチ131㎏、ジャーク171㎏、トータル302㎏で3位。自身大学初の6本全取、スナッチで自己ベストタイ、ジャークは自己ベストを1kg更新。「3位よりそっちの方がうれしい」と成長をかみしめた。来年の全日本選手権に向けて、まずはその規定記録である305㎏へあと3kg。着実にレベルアップしていく。

それぞれが冬に向けてレベルアップのヒントを得た今大会。「底上げはできつつある」(中野主将)とチームの状態は決して悪くない。そんな中、明大チームにとってカギとなってくるのがケガとの向き合い方だ。競技柄、故障を抱える選手が多く、慢性的な痛みに悩む選手もいる。それでも「うまく向き合っていくしかない」(後藤)。実力を発揮するためにもチーム全体として取り組んでいく必要がある。12月のインカレに向けて一つ一つ壁を乗り越えていく。

[星川裕也・高野夕]