大東大を完封、好調発進/第44回全国大学選手権

ラグビー
1999.01.01
 重戦車が再び立ち上がった。明早戦でのまさかの大敗から2週間、冬の北風が吹きすさぶ瑞穂ラグビー場で行われた大学選手権1回戦は、43-0と大東大を圧倒。ベスト8進出を決め、来月12日に行われる決勝での早稲田との再戦に向け、順調なスタートを切った。
 明早戦での屈辱的敗戦の悔しさをしっかりと胸に刻み込み、再起を誓った上野組。しかし、試合開始5分に初スタメンを勝ち取ったWTB濱口(政経2)のトライで先制するも、その後は持ち前のFW攻撃も相手のタックルを前に粉砕され、思うようにゲインできないなど、ペースを上げることができず、スローな立ち上がりとなる。それでも、自慢のFWを中心に徐々にリズムをつかみ、21-0で前半を折り返した。
 今日の試合で明治に流れを呼び込んだのはモールだった。普段なら徹底してスクラムを選択する場面で今回はことごとくラインアウトを選択。「変なスクラムを組まされるよりは、モールにこだわりたかった」(宇佐美・文4)。ラインアウトでは確実にマイボールを確保し、流れを呼び込んだ。それが結果的にいつもの明治を取り戻させることとなった。

 そして迎えた後半は、前半にはあまり見られなかったスクラムに加え、BKへの展開を有効的に使うことで大東大に思うようなプレーをさせなかった。また、ディフェンス面でも収穫があった。試合前日まで集中的に練習してきたという組織ディフェンスの成果を発揮し、零封で2回戦進出。

 しかし、本来ならもっと点差がついてもおかしくない試合だった。80分の試合中、明治はほとんどの時間を大東大陣内でプレーし続けた。ラインアウト・スクラム・モールで相手を上回り、幾度となくインゴール手前まで詰め寄ってトライチャンスを演出。それでも、結果的にトライに結び付けたのは7つ。明らかに取れるところで取りきれなかった。「取りきれなかった部分があった」(宇佐美)。

 選手たちは目の当たりにしたはずだ。ちょうど2週間前の国立競技場。自分たちに流れが来たと見るや、相手の気持ちをリセットさせる間を一切与えることなく攻め続け、明治陣内に攻め入る度、着実にトライに結び付けていた早稲田のそつのない攻撃を。結果的に、戦前には誰も予想だにしなかった歴史的大勝をかっさらっていった。チャンスを生かしきることができなければ、試合の流れを相手に与えることとなる。必ずや早稲田にリベンジを果たそうと執念を燃やす明治フィフティ-ンにとって、まだまだ乗り越えなければいけない壁はたくさんある。

 来週末は花園ラグビー場で越年を懸けた京産大との戦いが待っている。早稲田と決勝でのリベンジを目標とする以上、ここで負けるわけにはいかない。関東学大が出場を辞退し、一部では早稲田一強との呼び声が掛かっている大学ラグビー界。そこに待ったを掛けるためにも、次の試合で強い明治を見せつけてほしい。

~試合後のコメント~
藤田ヘッドコーチ
「ディフェンスはしっかりできたが、ブレイクダウンはもっと激しくしたい。アタックに関してはまだ伸びる可能性がある。スタイルは変えていないが、コミュニケーションなどの工夫をもっとしっかりしたい」。

山口BKコーチ
「明早戦以降ディフェンスに関しては藤田さんを中心に要点を確認しながら練習を行ってきた。クボタからディフェンスコーチを呼んでスポット的に指導を受けたことも、選手たちにとってインパクトがあったと思うし今日のプレーにも出ていた。しかしタックルをはじめ、選手のディフェンスへの意識はまだまだ十分ではない」。

HO上野主将(法4)
「トーナメントなので、まずは勝ってよかった。以前から向上した点は、組織としてのディフェンスとタックル、ラインで前へ出れるようになったこと。ディフェンスのシチュエーションが少なかったが、練習の効果は出ている。早稲田戦の後、徹底的にミーティングをした。腹を割って話そうということで、激しい言い合いになったこともあった。あのミーティングが無かったら、今日のチームの結束はなかったと思う。京産大はFWが強いし、今日はスクラムトライが取れなかったので、反則を受けても取れるようなスクラムを目指したい」。

PR川俣(政経4)
「ディフェンスとかオフェンスを4年生で考えて、チームの決めごとを作った。セットプレーも安定していた。0に抑えられてよかった。京産大はスクラムが強いが、いつも通り自分たちのラグビーをやっていきたい」。

PR梅原(農4)
「立ち上がりブレイクダウンが試合を通して悪かった。それはうちの意識が足りなかったから。スクラムは1本目に組んだ時にいけると思った」。

LO雨宮(商4)
「マイボールラインアウトは練習した成果が出て成功率もよかった。次の試合ではヤンボールで競っていきたい」。

LO柳川(法4)
「早稲田戦を終えてから、どういうラグビーをやっていくのかを徹底的に話して、今の形でいこうということになった。その後に藤田さんのつてでコーチに来てもらって、ディフェンスを練習した成果が失点0という形で出たと思う。でも、アタックの球出しのところでテンポが悪くなってハーフに負担が掛った場面が多かったから、改善していかなければならない。次に勝ったら国立。今日の後半のような次につながるゲームをしたい」。

FR杉本晃(政経3)
「ボールを持つことさえほとんどなく、何もできなかった。スクラムはコントロールされていた気がする。FWはモールで、BKは展開してトライを取ることが目標だった。完封できたことと後半にトライを取たことがわずかな収穫。近年越年していないから次の試合は勝ちたい」。

FR山本(政経3)
「スクラムはいつも通りに押せたが、回された時に押せなかった。ブレイクダウンの厳しさ、個人のタックルの精度が課題。ディフェンスを強化して京産大戦に臨みたい」。

NO.8宇佐美
「(紫紺を着て初の地元凱旋(がいせん)試合だったが)いつも通りやれた。今週は組織ディフェンスの練習をやってきたので、完封という結果に関しては満足している。まだまだ接点で甘い部分があるので、それはこれからの課題として詰めていきたい」。

SH茂木(営4)
「今日話すことは何もない。やろうとしていたことができていない。ポイントでやらなければならないことができなくなった。明早戦での負けが生かされていない。やろうとしていることをチーム全体でできない限りきつい」。

WTB濱口
「スタメンだった時はうれしかった。緊張していたけどやってきたことが出せた。次はトライを確実に取にいく」。

CTB衛藤(営1)
「相手の意識がFWにいっていたので、空いているポイントにBKで展開することができた。失点を0に抑えられたことが、明早戦以降に修正した点で最大の成果だったと思う。外国人選手はそこまで意識しなかった」。

WTB松本(法3)
「(明早戦から連続トライに関して)今日のトライも狙っていった。個人的には今日はもっと動けたと思う。次の試合もトライしてチームに貢献したい」。

FB星野
「今日は相手の両外国人が中にいたので外に展開してトライを狙った。ディフェンスは早くセットして前へ出られたと思う」。

仲西(政経3)~後半34分から途中出場~
「久々の紫紺だった。次の試合ではテンポを上げていきたい。そしてスクラムが強い明治を見せたい」。

松浦(商3)~後半13分から途中出場~
「ベンチのみんなは出たがっていた。自分は試合前、藤田ヘッドコーチに今回は出すと言われていたので心積もりはできていた。個人的にはもっとブレイクダウンで激しくいきたかった」。

坂本(政経4)~後半29分から途中出場~
「(久々の紫紺に関して)やはり違うものがある。今回はケガ人が多くて運がよかったという面もあるが、メンバーに選ばれてよかった。今日はモールにこだわったことでリズムがつかめた。自分は紫紺を着て早稲田と試合をしたことがないので、先発メンバーに入って早稲田とやりたい」。

峯岸(農4)~後半25分から途中出場~
「途中出場した時の流れが良かったから、それを継続できるように試合前の課題を意識して試合に入った。完封したと言っても、今日はレフェリーに助けられた場面もあったので、まだまだ満足してはいけない。次の京産大のFWは激しくくると思うので、FWで勝ってこちらの流れで試合をしたい。(メンバーの中で唯一の付属校出身について)付属の代表だという意識はもちろんある。後輩が見て、自分も大学でやってみようと思うようなプレーをしていきたい」。

田原(政経3)~後半25分から途中出場~
「(地元の愛知での試合だったが)瑞穂ラグビー場は中学生の時以来でした。親や友だちに自分のプレーを見せるチャンスだったので、正直に言うともう少し出たかった。今日入った場面では、勝ってはいたがリズムに乗れていなかったので、テンポアップをさせたかったけどうまくいかなかった。基本的なプレーをもっとしっかりやっていかないといけない」。

呉(政経2)~後半29分から途中出場~
「久々の公式戦だが思い切りやるように言われていた。FWを前にいかせてBKでトライを取る形が理想だが、短い時間だったので思いどおりできなかった。試合の状況判断やキックの精度に磨きをかけていきたい」。

奥田(政経3)~後半12分から途中出場~
「BKは縦に突破してボールをキープするというように基本に戻ってプレーした。次は100パーセントのプレーができるように修正したい」。